「調べれば調べるほど、続けるなという話しか出てこない」 「好きなことを仕事にしたはずなのに、続ける前提が崩れていく」 「いま抜けたほうがいいのか、抜けたら何も残らないのか」
「やめとけ」の理由は読むたびに増えるのに、自分に当てはまるのかは分からない。 そんな経験がある人も多いのではないでしょうか。
「やめとけ」は、雑な言葉です。 中身が5つくらい混ざっていて、そのうち3つは、このデータでは答えられません。
先に、分けます。
最初に——このデータで答えられないこと
この記事が使うのは、厚生労働省の「job tag」に入っている職業別の調査データです。 実際にその仕事をしている人が、どんな方向に興味を持っているかと、何を大事にしているかが入っています。
逆にいうと、次のことは測っていません。
- 年収がいくらか
- 任期があるか、契約がいつまでか
- ポストがいくつあるか、そこに就けるか
- 学位や業績が、どこまで要るか
「研究職はやめとけ」の理由の多くは、この4つです。 そこは答えられないと、先に書いておきます。
そのうえで、答えられる2つが、この仕事を選んだ理由そのものに関わります。
「やめとけ」の中身は、だいたい5つです
| # | 言われていること | 数値との関係 |
|---|---|---|
| ① | 任期が切れたら終わり/ポストが無い | 答えられない |
| ② | 割に合わない | 答えられない |
| ③ | 潰しが効かない | 当たっています |
| ④ | 不安定な仕事だ | 測っていません。ただし1つだけ言えることがある |
| ⑤ | どうせ「研究職」はどれも同じ | 違う。ここが最大のズレ |
③ 「潰しが効かない」——ここは当たっています
先に、当たっているほうから書きます。
このサイトでは、37業界それぞれの興味の形を6つの領域の数値にして、業界どうしがどれだけ離れているかを距離で出しています。
研究職に最も近い業界でも、距離は 0.68 ありました。
これは37業界の中でいちばん遠い数値です。 37業界から作れる666通りの組み合わせを並べたとき、「最も近い相手が、ここまで遠い」業界は、研究職とコンサルの2つだけでした。
つまり——興味の形が似ている業界が、この業界の周りにほとんどありません。
「潰しが効かない」と言われるとき、多くは求人や経歴の話をしています。 それは測っていません。ただ、興味の形の側から見ても、地続きの隣が無いのは本当です。
これは、外へ出るときのコストとして先に見ておいたほうがいい点です。
④ 「不安定な仕事だ」——測っていません
任期も、契約の長さも、ポストの数も、このデータには入っていません。 「安定しているか」は答えられません。
測れているのは1つだけ。「雇用や生活の安定性を、どれだけ大事にしているか」です。
これは実際の安定性ではなく、その仕事をしている人が何を重視しているかの数値です。 混ぜないでください。
そのうえで見ると、研究職は 3.59 で、37業界の中で5番目でした。上位に入ります。
上にいるのは 警察・消防・自衛隊、公務員(行政)、医師・歯科医師、金融の4業界だけです。
「研究職の人は安定に無頓着だ」という前提は、少なくともこの数値には出ていません。 むしろ安定を重く見ている人が多い仕事として出ています。
だからこそ、それが崩れたときの落差が大きい——というところまでは、このデータからは言えません。そこは推測になります。
⑤ 「研究職はどれも同じ」——違います
これが、この記事でいちばん重要なところです。
研究職として収録されている7職種を並べると、「決まった手順を正確に回すことへの向き方」が 1.83 開いていました。
最も高いのは科学捜査研究所鑑定技術職員、最も低いのは情報工学研究者です。
この幅は、37業界それぞれの「業界の中で最も開いた領域の幅」を並べると2番目でした(1位は 公務員(行政)の 1.92)。
つまり——同じ「研究職」の中に、手順が厳密に決まっている仕事と、ほとんど決まっていない仕事が、両方入っています。
「研究職に向いていなかった」と感じたとき、それが研究そのものへの向き不向きなのか、手順の決まり方への向き不向きなのかは、分けて考えられます。 後者なら、研究をやめる必要はありません。
7職種でどう割れるかは、研究職に向いてる人にまとめました。
ついでに——「専門に閉じる」は、そのとおりです
もうひとつ、よく言われることに触れておきます。
研究職が大事にしていることの1位は専門性で、4.22。37業界の中で最も高い数値でした。
2位は自律性、3位は自己成長、4位は達成感。 上位4項目が、すべて「自分の中に積み上がる」側で埋まっています。
外から返ってくるもの——認知や報酬——は、そのあとです。
「専門に閉じる」は、欠点として言われがちですが、数値の上では、この仕事が選ばれている理由そのものです。 問題になるのは、それが自分の求めているものと違ったときだけです。
「やめとけ」が当たる人と、当たらない人
当たりやすいのは、こういう人です。
- 業界を移りながら、形を作っていきたい人。 最も近い業界でも 0.68 離れていて、これは37業界でいちばん遠い
- 人と関わることが、仕事の中心であってほしい人。 人と関わる向き方 3.28 は37業界で26番目です
- 積み上がる感覚より、外から返ってくるものを上に置いている人。 上位4項目は、すべて積み上がる側でした
当たらないのは、こういう人です。
- 答えが出ていない問いを、答えが出るまで抱えていられる人
- 手を動かして確かめないと納得できない人。 手を動かす向き方 3.70 は37業界で4番目です
- 手順の決まり方が合わないだけの人。 それは業界ではなく、7職種のどれを選ぶかの話です
「やめとけ」と言っている人が間違っているわけではありません。 その人にとっては本当だった、というだけです。
まとめ
- このデータでは、年収・任期・ポストの数・学位や業績の要件は答えられない
- 「潰しが効かない」は当たっている。 最も近い業界でも 0.68 で、37業界でいちばん遠い
- 「不安定」は測っていない。 測れているのは重視度だけで、そちらは37業界で5番目と上位
- 「専門に閉じる」はそのとおり。 専門性 4.22 は37業界の最高で、上位4項目はすべて積み上がる側
- 「研究職はどれも同じ」は違う。 手順への向き方は業界の中で 1.83 開き、37業界で2番目
決めるべきなのは、「やめとけ」が正しいかどうかではありません。合っていないのが研究なのか、手順の決まり方なのかです。
関連ページ
- 研究職に向いてる人——7つの職種で、どこが割れてどこが揃うか
- 研究職の転職エージェントの選び方——形が決まったあとの話
- 業界別の向き・不向き一覧——37業界を1枚の表で
- このサイトのデータについて——数値の出典と、測っていないこと
この記事の根拠
数値が高いほど、その方向への興味が強いことを示します。
業界平均(職業興味・RIASEC)
| 業界 | 現実的 | 研究的 | 芸術的 | 社会的 | 企業的 | 慣習的 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 研究職 | 3.70 | 4.14 | 2.68 | 3.28 | 3.20 | 3.01 |
| メーカー技術職 | 3.61 | 3.54 | 2.55 | 3.04 | 3.08 | 3.01 |
| IT・エンジニア | 3.45 | 3.42 | 2.75 | 3.15 | 3.17 | 2.93 |
| 農林水産 | 3.77 | 3.41 | 2.44 | 2.94 | 2.88 | 3.20 |
| 臨床検査・医療技術 | 3.76 | 3.36 | 2.59 | 3.78 | 2.79 | 3.47 |
| 建設技能・職人 | 3.74 | 2.98 | 2.84 | 3.22 | 2.90 | 3.20 |
| コンサル | 2.89 | 3.19 | 2.65 | 3.49 | 3.63 | 2.69 |
37業界での位置:研究的 4.14 は1位(2位は 法律・会計 3.55)。現実的 3.70 は4番目(上は 農林水産 3.77/臨床検査・医療技術 3.76/建設技能・職人 3.74)。社会的 3.28 は26番目。慣習的 3.01 は下から6番目(メーカー技術職と同値)。
仕事価値観(11項目・研究職)
| 項目 | 値 | 37業界での位置 |
|---|---|---|
| 専門性 | 4.22 | 1番目 |
| 自律性 | 3.84 | 2番目(1位は士業) |
| 自己成長 | 3.83 | 2番目(1位は美容・理容) |
| 達成感 | 3.81 | 5番目 |
| 奉仕・社会貢献 | 3.65 | 5番目 |
| 雇用や生活の安定性 | 3.59 | 5番目 |
| 社会的認知 | 3.50 | 3番目 |
| 良好な対人関係 | 3.39 | 14番目(マスコミ・放送・出版と同値) |
| 労働安全衛生 | 3.35 | 12番目(建設・施工管理/販売・小売と同値) |
| 私生活との両立 | 3.34 | 10番目(一般事務・オフィスワークと同値) |
| 報酬 | 3.21 | 7番目 |
雇用や生活の安定性で上にいる4業界:警察・消防・自衛隊 4.09/公務員(行政)3.80/医師・歯科医師 3.69/金融 3.62。
「積み上がる系」の4項目:本サイトでは達成感・自律性・専門性・自己成長の4項目をこう呼んでいます。研究職では、この4項目がそのまま上位4位を占めます。
業界内の幅:研究職の中で最も開くのは、決まった手順を回す向き方の 1.83(科学捜査研究所鑑定技術職員 4.27 ←→ 情報工学研究者 2.44)。37業界それぞれの「業界の中で最も開いた領域の幅」を並べると2番目です(1位は 公務員(行政)1.92、3位は 金融 1.79)。職種ごとの内訳は 研究職に向いてる人 にあります。
業界間の距離:6領域の値をそのままユークリッド距離で算出したものです。上の表の数値から再現できます。 研究職は メーカー技術職 0.676、IT・エンジニア 0.781。37業界666ペアの中で「最も近い相手までの距離」が最大なのが、研究職 0.676 とコンサル 0.676 の2業界です(3位は リハビリ・治療 0.660、4位は 臨床検査・医療技術 0.618、5位は 士業 0.610)。
研究職に含めた職業:土木・建築工学研究者/情報工学研究者/医学研究者/科学捜査研究所鑑定技術職員/薬学研究者/バイオテクノロジー研究者/社会学研究者の7職業の平均です。分析化学技術者・高分子化学技術者・バイオテクノロジー技術者は、メーカー技術職のほうに含めており、こちらでは数えていません。
このデータに含まれていないもの:年収・労働時間・求人数・任期や雇用形態・ポストの数・学位や業績の要件・研究費の状況。本文で「答えられない」「測っていない」と書いた項目は、すべてこれに当たります。
出典:厚生労働省 職業情報提供サイト(日本版O-NET)「job tag」簡易版数値系ダウンロードデータ ver.7.00(最終更新 2026年2月10日/制作・著作:独立行政法人 労働政策研究・研修機構)
