「自分はエンジニアに向いているんだろうか」 「文系だし、数学も得意じゃない」 「もう何年もやっているのに、向いている実感がない」
調べるほど「向いている人の特徴」が書いてあって、そのどれにも半分しか当てはまらない。半分しか当てはまらないのは、当然です。 「エンジニア」という言葉が指しているものが、ひとつではないからです。
分からないことに出会うと、自分で調べ始める人
この形は、下で型①として出てきます。ただ、エンジニアの中にはほかに4つ、別の型があります。
- 画面の中だけでは確かめた気にならない人
- 技術そのものより、物事が前に進んだことに満足する人
- 技術の細部と相手の事情を、同時に見なければならない人
- 何を作るかを自分で決めたい人
「IT業界に向いているか」という問いが、成立していません
IT・エンジニアを構成する9職種を並べると、業界の中で大きく割れました。向き(向き方)というのは、その仕事をしている人の興味がどこへ向いているかのことです。とくに、調べて突き止めることへの向き方が大きく開きます。いちばん高いのがデータサイエンティスト、いちばん低いのがプロジェクトマネージャです。
同じデータで37業界の平均を並べると、調べて突き止める向き方は研究職から物流・ドライバーまで開きます。その、業界をまたいで開く差の6割を超える幅が、IT業界の中だけで開いているわけです。選ぶ単位は、業界ではなく型のほうです。
突き止める人、触りながら突き止める人、動かす人、つなぐ人、作る人
① 突き止めたい人
データサイエンティストとプログラマーが、この型の中心です。 調べて突き止めることへの向き方が業界内で最も高く、人と関わる向き方は逆に低い組み合わせです。
分からないことがあると、分かるまで手が止まらない人。周りに人がいない時間が長くても平気な人。「調べ始めると時間を忘れる」という感覚を仕事中に何度も味わいたいなら、いちばん近いのはこの型です。
② 触りながら突き止めたい人
組込み・IoTのエンジニアが、いちばんはっきりした形をしています。手を動かすことも、突き止めることも、どちらも業界の上位にあるからです。画面の中だけでは満足できない人。実物が動くかどうかで確かめたい人の型です。
ちなみにこの型は、IT業界の外にも同じ形があります。メーカー技術職は、社内SEと並んで、比較した37業界の中でITにいちばん近い位置にいます。
③ 動かしたい人
ここに入るのはプロジェクトマネージャで、突き止めることへの向き方は業界内で最も低く、代わりに人と関わることと人を動かすことが高い。技術そのものより、物事が前に進むことに手応えを感じる人の場所です。
満足の中心も違います。他のIT職種の多くが「専門性が積み上がること」を1位に置くのに対し、PMは「達成感」が1位で、2位に「自律性」が来ます。「技術から離れるのは後退だ」と感じなくていいと思います。求められている向き方が、もともと違うからです。
④ つなぎたい人
基盤システムのエンジニアです。人と関わることは9職種の中で最も高く、人を動かすこともPMとほとんど並んで上端にあります。突き止めることへの向き方は、9職種の真ん中より少し下です。技術も分かるし、人とも話せる。その両方が要る場所です。
満足の中心に「雇用や生活の安定性」が入るのも、IT職種では珍しい形です。
⑤ 作りたい人
スマホアプリの開発が、この型に最も近い形をしています。表現することへの向き方が9職種で最も高く、逆に人と関わる向き方は最も低い。何を作るかを自分で決めたい人。決められた仕様を実装するより形そのものに関わりたい人には、ここがいちばん合うかもしれません。
それと、この型はIT業界の外に強い引力があります。クリエイティブ職の表現への向き方は、比較した37業界の中で最も高い水準です。
「向いていない気がする」と思ったときに、見るところ
向いていないのが業界なのか、いまの職種なのか、いまの職場なのか。それで、やることが変わります。
- 業界が合わない — 手を動かすことと突き止めること、そのどちらも動機に無いなら、その可能性があります
- 職種が合わない — 業界内の幅があるので、型を変えるだけで解決することがあります
- 職場が合わない — ここは働いている人に聞く側です。同じ職種名でも、受託と自社開発で日々の中身は別物です
うまくいった日を思い出したとき、そこに人はいましたか
一人で集中していた日を思い出すなら①②⑤、誰かと話して物事が動いた日なら③④です。
- 分からないことに出会ったとき、自分で調べ始めるなら①②、詳しい人に聞きに行くなら③④。どちらが優れているという話ではありません
- 「これは自分が作った」と言いたいなら⑤の要素が強い。動けばいいと思えるなら、そこは動機の中心ではありません
まとめ——突き止める・触る・動かす・つなぐ・作る
- 「IT業界に向いているか」という問いは成立しない。業界内の差が、37業界をまたぐ差の6割を超える
- 突き止めたい人(データサイエンティスト・プログラマー)。一人で進めることに比重が置かれる
- 動かしたい人(PM)。突き止める向き方は業界内で最も低い。満足の1位は達成感
「IT業界に向いているか」は、たぶん最後まで答えの出ない問いです。答えが出るのは、自分がどの型に近いかのほうです。
近い型が決まったら、エンジニアの転職エージェントの選び方へ。
関連ページ
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この記事の根拠
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数値が高いほど、その方向への興味が強いことを示します。
IT・エンジニアの職業別(向き方)
| 職業 | 現実的 | 研究的 | 芸術的 | 社会的 | 企業的 | 慣習的 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| データサイエンティスト | 3.36 | 3.85 | 2.72 | 3.03 | 3.21 | 2.72 |
| プログラマー | 3.75 | 3.76 | 2.73 | 2.90 | 2.88 | 3.12 |
| システムエンジニア(組込み、IoT) | 3.74 | 3.68 | 2.86 | 3.36 | 3.14 | 3.05 |
| ソフトウェア開発(パッケージソフト) | 3.31 | 3.49 | 2.64 | 3.00 | 3.15 | 2.85 |
| ソフトウェア開発(スマホアプリ) | 3.32 | 3.40 | 2.97 | 2.79 | 3.03 | 2.61 |
| システムエンジニア(基盤システム) | 3.45 | 3.35 | 2.76 | 3.48 | 3.41 | 3.12 |
| システムエンジニア(Webサービス開発) | 3.24 | 3.24 | 2.82 | 3.13 | 3.10 | 3.00 |
| システムエンジニア(受託開発) | 3.29 | 3.15 | 2.71 | 3.24 | 3.19 | 2.98 |
| プロジェクトマネージャ(IT) | 3.57 | 2.86 | 2.52 | 3.43 | 3.39 | 2.91 |
表の太字はIT・エンジニア9職種の中での最大・最小であって、37業界での順位ではありません。
比較に使った37業界の幅:研究的は 研究職 4.14 ←→ 物流・ドライバー 2.61 で 1.53。IT9職種の幅 0.99 は、その6割を超えます。
仕事価値観:9職種のうち7職種で1位が「専門性」。外れるのはプログラマー(達成感3.55/専門性3.46/自己成長3.16)とプロジェクトマネージャ(達成感3.75/自律性3.69/自己成長3.66)の2職種です。なお運用・管理とヘルプデスクはこの9職種に含みません(社内SE側に収録しています)。
業界間の距離(6つの向きの値がどれだけ離れているか。小さいほど近い):メーカー技術職 0.326、社内SE 0.335(差が0.01以内なので同率として数えています)。
出典:厚生労働省 職業情報提供サイト(日本版O-NET)「job tag」簡易版数値系ダウンロードデータ ver.7.00(最終更新 2026年3月17日/制作・著作:独立行政法人 労働政策研究・研修機構)