研究職に向いてる人——業界名で決まるところと、職種でしか決まらないところ

「研究が好きなのは確かだが、この分野で合っているのか分からない」 「同じ研究職でも、隣の研究室とは働き方がまるで違う」 「向いていないのは分野のせいなのか、自分のせいなのか」

「研究職 向いてる人」で調べても、業界の話しか出てこない。 そんな経験がある人も多いのではないでしょうか。

この業界は、業界の話で決まるところと、決まらないところが、はっきり分かれます。 先に分けます。


向いているのは、こういう人です

答えが出ていない問いを、答えが出るまで抱えていられる人。 研究職として収録されている7つの職種すべてに共通しているのは、そこです。

そして、積み上げたものが自分の中に残ることを、いちばん上に置いている人。

逆にいうと、それ以外はほとんど共通していません。

  • 決まった手順の中で、精度を突き詰めたい人——手順と様式が厳密に決まっている職種があります
  • 手順そのものを自分で作りたい人——決まっているものがほとんど無い職種があります
  • 人や社会に向けて結果を出したい人——相手が人である職種があります
  • 現物の構造や設備を対象にしたい人——扱う対象が図面と現場である職種があります

この4つは、同じ「研究職」の中にあります。 そして求められるものが、まるで違います。

以下、どこが業界名で決まって、どこが決まらないのかを説明します。


決まるところと、決まらないところを、幅で判定します

厚生労働省が運営する職業情報提供サイト「job tag」には、約500の職業について、実際にその仕事をしている人がどんな方向に興味を持っているかの調査結果が入っています。

「業界名で決められるか」は、2つの幅を比べれば分かります。

  • 業界の中の幅——その業界の職種どうしで、どれだけ開いているか
  • 業界どうしの幅——37業界の平均を並べたとき、最高と最低がどれだけ開いているか

業界の中の幅のほうが大きければ、業界名では決まりません。 逆なら、業界名で決めていい。


調べて突き止める向き方は、業界名で決めていい

研究職の平均は 4.14 で、比較した37業界の中で最も高い数値でした。

7職種の中でいちばん高いのと、いちばん低いのとの差は 1.30。 一方、37業界の平均どうしを並べたときの差は 1.53 です。

業界の中の幅のほうが小さい。 つまりこの領域は、業界名で決めていい側です。

もっとはっきりしているのは、いちばん低い職種の位置です。 研究職の中でいちばん低いのは土木・建築工学研究者で 3.33 ですが、この値でも、37業界のうち23業界の平均より上にいます。

「どの研究に就いても、調べる比重は高い」——ここは業界名で言い切れます。


決まった手順への向き方は、業界名では決まりません

同じ7職種で、まったく逆の結果が出たのが「決まった手順を正確に回すことへの向き方」です。

7職種の幅は 1.83。 これに対して、37業界の平均どうしの幅は 0.89 しかありません。

業界の中の幅が、業界どうしの幅の2倍を超えています。

37業界それぞれについて「業界の中で最も開いた領域の幅」を出して並べると、研究職のこの 1.83 は2番目でした(1位は 公務員(行政)の 1.92)。

つまり——「研究職は手順が決まっていない仕事だ」も、「厳密に決まっている仕事だ」も、どちらも業界名では言えません。 どの研究に就くかで決まります。


4つの型に分かれます

以下は、6つの領域それぞれで業界の中の端に来た4職種です。 残る3職種(医学研究者・薬学研究者・バイオテクノロジー研究者)は、この両端の間に入ります。

① 決まった手順の中で、突き止める型

科学捜査研究所鑑定技術職員が、この型です。

調べて突き止める向き方は 4.63 で、本サイトが収録している320職業の中で最も高い数値でした。手を動かす向き方も、決まった手順を回す向き方も、7職種でいちばん高い。

手順が厳密に決まっているところで、精度を突き詰める。 ここが中心です。

一方、表現することへの向き方と、人を説得し動かす向き方は7職種で最も低い。 決められた様式の外へ出る仕事ではありません。

この型だけ、大事にしているものの順番が違います。 ほかの3職種は2番目に自律性が来るのに、この職種だけ2番目が雇用や生活の安定性(4.76)でした。

② 枠を自分で作る型

情報工学研究者が、この型です。

決まった手順を回す向き方は 2.44 で、7職種の中で最も低い。 人と関わる向き方も最も低く出ています。

何をどう進めるかが決まっていない。 そこを自分で決めることが仕事に含まれます。

大事にしているものは、専門性・自律性・達成感の順。 自分で決められる範囲が、満足の中心近くにあります。

③ 人と社会へ向く型

社会学研究者が、この型です。

人と関わる向き方も、人を説得し動かす向き方も、表現することへの向き方も、7職種で最も高い。 逆に手を動かす向き方は最も低い。

対象が人と社会で、成果物が言葉になる側です。7職種の中では、いちばん研究室から離れた形をしています。

④ 現物を対象にする型

土木・建築工学研究者が、この型です。

調べて突き止める向き方は 3.33 で、7職種の中で最も低い。 ただし上に書いたとおり、それでも37業界のうち23業界の平均より上にあります。

扱う対象が図面と現場と構造物で、研究と実装の距離がいちばん近い側です。


4つに共通していたのは、専門性でした

端に来た4職種すべてで、大事にしていることの1位は専門性でした。

業界平均でも 4.22 で、37業界の中で最も高い。

割れるのは2番目です。 3職種は自律性が来て、科学捜査研究所鑑定技術職員だけが雇用や生活の安定性でした。

「研究職に向いているか」を測るなら、専門性のほうは業界名で答えが出ます。 分かれるのは、その専門性を、決められた枠の中で積むのか、枠を自分で作りながら積むのかです。


自分がどれに近いか、確かめる3つの問い

問い1:いま追いかけている問いは、誰が決めたものですか

外から来た問いに精度で応えたいなら①④問いそのものを自分で立てたいなら②③です。

問い2:手順や様式が決まっていることを、どう感じますか

安心するなら①窮屈なら②です。ここが、この業界でいちばん割れます。

問い3:結果を、最後に誰へ渡しますか

人や社会へ渡すなら③現場の構造物や設備へ渡すなら④次の検証へ渡すなら①②です。


まとめ

  • 調べて突き止める向き方は、業界名で決めていい。 業界の中の幅 1.30 は、37業界の平均どうしの幅 1.53 より小さい
  • 決まった手順への向き方は、業界名では決まらない。 業界の中の幅 1.83 は、37業界の平均どうしの幅 0.89 の2倍を超える
  • 手順の中で突き止める型(科学捜査研究所鑑定技術職員)——2番目に大事なものが、ここだけ安定になる
  • 枠を自分で作る型(情報工学研究者)——決まった手順への向き方が7職種で最も低い
  • 人と社会へ向く型(社会学研究者)——成果物が言葉になる側
  • 現物を対象にする型(土木・建築工学研究者)——研究と実装の距離が最も近い

決めるべきなのは、研究職に向いているかではありません。4つのうち、自分がどれに近いかです。


関連ページ


この記事の根拠

数値が高いほど、その方向への興味が強いことを示します。

研究職の業界内の最大・最小(職業興味・RIASEC)

領域業界内で最も高い職業業界内で最も低い職業
現実的(手を動かす)科学捜査研究所鑑定技術職員4.61社会学研究者3.351.26
研究的(調べて突き止める)科学捜査研究所鑑定技術職員4.63土木・建築工学研究者3.331.30
芸術的(表現する)社会学研究者3.04科学捜査研究所鑑定技術職員1.931.11
社会的(人と関わる)社会学研究者3.69情報工学研究者2.940.75
企業的(説得し動かす)社会学研究者3.54科学捜査研究所鑑定技術職員2.850.69
慣習的(手順を回す)科学捜査研究所鑑定技術職員4.27情報工学研究者2.441.83

太字は研究職7職種の中での最大・最小であって、37業界での順位ではありません。医学研究者・薬学研究者・バイオテクノロジー研究者の3職種は、どの領域でも端に来なかったため、上の両端の間に入ります。

業界平均:現実的3.70/研究的4.14/芸術的2.68/社会的3.28/企業的3.20/慣習的3.01。上の7職種の平均です。

比較に使った37業界の幅:調べて突き止めることは 研究職 4.14 ←→ 物流・ドライバー 2.61 で 1.53。決まった手順を回すことは 管理部門(課長級)3.58 ←→ コンサル 2.69 で 0.89

業界内の幅としての位置:37業界それぞれの「業界の中で最も開いた領域の幅」を並べると、1位が 公務員(行政)1.92、2位が研究職 1.83、3位が 金融 1.79、4位が 教育 1.69、5位が 美容・理容 1.61 です。一覧は 業界別の向き・不向き一覧 にあります。

土木・建築工学研究者 3.33 より平均が低い23業界:コンサル 3.19/社内SE 3.31/建設・施工管理 3.13/営業 2.97/医療・介護・保育 2.94/士業 3.26/管理部門(担当)2.98/管理部門(課長級)3.12/物流・ドライバー 2.61/販売・小売 2.77/飲食 3.05/公務員(行政)3.24/警察・消防・自衛隊 3.04/福祉・相談支援 2.90/ホテル・観光・ブライダル 2.82/鉄道・航空・海運 2.98/建設技能・職人 2.98/製造技能(金属加工)2.99/組立・生産ライン 2.83/食品製造 3.02/化学・素材・日用品製造 3.03/一般事務・オフィスワーク 2.69/ビルメンテナンス・施設管理 2.81。

職業単位での位置:科学捜査研究所鑑定技術職員の研究的 4.63 は、本サイトが収録している320職業の中で最も高い数値です(2位は アクチュアリー 4.59)。

端に来た4職種の仕事価値観(上位3項目)

職業上位3項目
土木・建築工学研究者専門性 4.14/達成感 3.89/自律性 3.80
情報工学研究者専門性 4.09/自律性 4.00/達成感 3.92
科学捜査研究所鑑定技術職員専門性 4.81/雇用や生活の安定性 4.76/奉仕・社会貢献 4.22
社会学研究者専門性 4.15/自律性 4.12/達成感 4.08

業界平均の上位3項目:専門性 4.22/自律性 3.84/自己成長 3.83。専門性 4.22 は37業界で最も高い数値です。

業界間の距離:研究職に最も近いのは メーカー技術職 0.676、次が IT・エンジニア 0.781。6領域の値をそのままユークリッド距離で算出したものです。

このデータに含まれていないもの:年収・労働時間・求人数・任期や雇用形態・学位や業績の要件・研究費の状況。

出典:厚生労働省 職業情報提供サイト(日本版O-NET)「job tag」簡易版数値系ダウンロードデータ ver.7.00(最終更新 2026年2月10日/制作・著作:独立行政法人 労働政策研究・研修機構)