リハビリ職は「やめとけ」と言われる——どこまで本当か

「同じことの繰り返しだ、と言われた」 「食べていけない、とも言われた」 「どちらも否定できないまま、続けている」

「やめとけ」は、雑な言葉です。 中身が5つくらい混ざっていて、そのうち1つは、データのほうが逆を示しています。

そして、もう1つは、はっきり当たっています。

先に、分けます。


最初に——このデータで答えられないこと

この記事が使うのは、厚生労働省の「job tag」に入っている職業別の調査データです。 実際にその仕事をしている人が、どんな方向に興味を持っているかと、何を大事にしているかが入っています。

逆にいうと、次のことは測っていません。

  • 給与や年収がいくらか
  • 労働時間や、身体の負担がどれくらいか
  • 求人がどれくらいあるか。増えるのか、減るのか
  • 独立して続けられるかどうか

この4つは答えられないと、先に書いておきます。

そして、この記事は施術や治療の効果についても、利用される方の状態についても、何も言いません。 そういう数値が、このデータには無いからです。書けるのは「その仕事をしている人が、何に向かっていて、何を大事にしているか」だけです。


「やめとけ」の中身は、だいたい5つです

#言われていること数値との関係
給料が上がらない答えられない
数が増えすぎている答えられない
身体がもたない答えられない
同じことの繰り返しで、専門性が積み上がらないデータと食い違う
優しいだけでは務まらない合っている

①②③は、このデータの外にあります。 現場で聞くしかありません。④と⑤だけ、数値の側から言えることがあります。


④ 「専門性が積み上がらない」——データは、逆を示しています

job tag には、その仕事をしている人が何を大事にしているかのデータも入っています。11の項目があります。

リハビリ・治療で最も高いのは、専門性が積み上がること 4.05。 この業界の11項目の中で、1位です。37業界を並べても、上位帯に入ります。

そして、ここが本題です。

この業界に入っている6つの職業を、1つずつ見ても、全部で専門性が1位でした。

最も高いのがはり師・きゅう師の 4.19、最も低いのが作業療法士の 3.95。その差は 0.24 しかありません。

6つの職業が、全員、同じ項目を1位に置いている。 これはかなり珍しい形です。

「同じことの繰り返し」だと感じている人が多い業界なら、この並びにはなりません。 積み上がるという前提が無い場所で、積み上がることが全員の1位に立つことはないからです。

もちろん、これは「あなたの職場でそうなっている」という意味ではありません。 業界としての平均が、そういう形をしているというだけです。

「積み上がらない」と感じているなら、業界の性質ではなく、職場の側を疑ったほうが早い。 データが言っているのは、そこまでです。


⑤ 「優しいだけでは務まらない」——合っています

リハビリ・治療の「人と関わる向き方」は 4.20。比較した37業界の中で、最も高い数値でした。2番目は医療・介護・保育の 4.11 です。

ここまでは、言われているとおりです。

問題は、その次にあります。

同じデータで、調べて突き止める向き方も測られています。リハビリ・治療は 3.52 で、37業界の中で4番目でした。

人と関わる向き方の上位5業界と、調べて突き止める向き方の上位5業界。この両方に入っているのは、37業界でリハビリ・治療だけです。

普通、この2つは別の業界に分かれます。 寄り添う業界と、突き止める業界。ここでは、同じ仕事の裏表になっています。

だから「優しいだけでは務まらない」は当たっています。

関わる量が多いのは事実で、そのうえで、なぜそうなっているのかを考え続ける部分が要る。 どちらか片方だけを動機にして入ると、もう片方が空きます。

そして、これは職場を変えても変わりません。 業界の形のほうです。


「やめとけ」が当たる人と、当たらない人

当たりやすいのは、こういう人です。

  • 外から認められることを燃料にしたい人。 外からどう見られるかを大事にする度合いは 3.04 で、37業界の中では真ん中あたり。関わった相手からは返ってきても、その外までは届きにくい構造です
  • 報酬を判断の中心に置いている人。 報酬を重視する度合いは 2.67 で、37業界の中では下位帯でした。これは給与額ではなく、重視している人の割合の話ですが、周りの動機がそこに寄っていないのは確かです
  • 決まった手順を正確に回したい人。 その向き方は 3.12 で、37業界の中では低い側にあります
  • 「終わった」という区切りが要る人。 関わりが長く続くので、区切りが来にくくなります

当たらないのは、こういう人です。

  • 寄り添うことと突き止めることを、同じ仕事だと思っている人
  • できることが増えていく感覚を、満足の中心に置ける人
  • 説明の言葉を、相手ごとに作り直すのが苦にならない人

まとめ

  • このデータでは、給与・労働時間や身体の負担・求人の増減・独立の可否は答えられない
  • 「専門性が積み上がらない」はデータと食い違う。 専門性 4.05 は11項目の1位で、6つの職業すべてで1位。職業ごとの差も 4.19 と 3.95 で、幅は 0.24 しかない
  • 「優しいだけでは務まらない」は合っている。 人と関わる向き方 4.20 は37業界で最も高いが、同時に調べて突き止める向き方 3.52 が37業界で4番目この2つの上位5に同時に入るのは37業界でこの業界だけ
  • 外から返ってくる側は高くない。 外からどう見られるかを大事にする度合いは 3.04、報酬は 2.67
  • 理学療法士は、このサイトでは医療・介護・保育のほうに入っています

決めるべきなのは、「やめとけ」が正しいかどうかではありません。消耗している理由が、業界の形の側にあるのか、いまの職場の側にあるのかです。


関連ページ


この記事の根拠

数値が高いほど、その方向への興味が強いことを示します。

業界平均(職業興味・RIASEC)

業界現実的研究的芸術的社会的企業的慣習的
リハビリ・治療3.313.522.694.203.073.12
医療・介護・保育3.072.942.594.112.933.18
美容・理容3.443.433.604.093.103.06
販売・小売3.282.772.843.983.243.26
ホテル・観光・ブライダル3.032.822.863.943.353.13
教育3.193.353.203.923.303.16
福祉・相談支援2.872.902.753.823.072.99
臨床検査・医療技術3.763.362.593.782.793.47
医師・歯科医師3.373.332.873.532.983.08
研究職3.704.142.683.283.203.01
法律・会計(弁護士・会計士)2.963.552.453.623.363.28
メーカー技術職3.613.542.553.043.083.01
マスコミ・放送・出版3.473.473.703.783.432.87
組立・生産ライン3.522.832.452.652.643.07
物流・ドライバー3.182.612.402.872.543.20

太字は、比較した37業界の中での最高・最低です。

社会的の上位5(分母は37業界)リハビリ・治療 4.20 / 医療・介護・保育 4.11 / 美容・理容 4.09 / 販売・小売 3.98 / ホテル・観光・ブライダル 3.94。幅は 1.55(最低は組立・生産ライン 2.65)。

研究的の上位5(分母は37業界):研究職 4.14 / 法律・会計(弁護士・会計士)3.55 / メーカー技術職 3.54 / リハビリ・治療 3.52 / マスコミ・放送・出版 3.47。幅は 1.53(最低は物流・ドライバー 2.61)。

この2つの上位5に同時に入るのは、37業界でリハビリ・治療だけです。上の2行を突き合わせれば再現できます。

仕事価値観(リハビリ・治療・11項目)

項目
専門性が積み上がること4.05
自己成長3.76
自律性3.76
人の役に立つこと3.67
達成感3.66
対人関係3.56
労働安全3.53
私生活との両立3.43
雇用や生活の安定性3.20
社会的認知・地位3.04
報酬2.67

6職業それぞれの専門性:はり師・きゅう師 4.19 / あんまマッサージ指圧師 4.07 / 柔道整復師 4.07 / 視能訓練士 4.02 / 言語聴覚士 4.00 / 作業療法士 3.95。6職業すべてで、専門性が11項目の1位です。幅は 0.24。

報酬の比較(分母は37業界):最も高いのは医師・歯科医師 3.65、最も低いのは物流・ドライバー 2.30、幅は 1.35リハビリ・治療 2.67 は下位帯です。

この11項目は「その仕事をしている人が、何をどれだけ重視しているか」の数値です。実際の給与額・労働時間・休日数ではありません。 本文で「答えられない」と書いたのは、この点を指しています。

リハビリ・治療に含めた職業:作業療法士(OT)/言語聴覚士/視能訓練士/あんまマッサージ指圧師/柔道整復師/はり師・きゅう師の6職業の平均です。

このデータに含まれていないもの:給与・年収・労働時間・休日数・身体の負担・求人数や需給・年齢構成・独立開業の可否・資格取得の難易度や合格率。この記事は、施術や治療の効果、利用される方の状態について一切何も述べていません。

出典:厚生労働省 職業情報提供サイト(日本版O-NET)「job tag」簡易版数値系ダウンロードデータ ver.7.00(最終更新 2026年2月10日/制作・著作:独立行政法人 労働政策研究・研修機構)