建設の職人の「やめとけ」、「何も残らない」の裏で、大事にするのは手応えと専門性

中身を先に(5項目)

「体が資本の仕事だから、長くは続かないぞと言われた」 「誰にでもできる仕事だ、とまで言われた」 「腹は立ったが、言い返す材料を持っていない」

現場の話をしても、積み上げてきたものは外からは見えない。何を大事にしているかで並べ直すと、上の2つに来るのは、やり遂げた手応えと、専門性が積み上がることです。


「職人はやめとけ」の中身は、だいたい5つです

このデータで答えられるデータの外で確かめる
#言われていることこのデータで見えること
①稼げない。収入が安定しない求人票で確かめる
②体を壊す。長くは続かない位置なら言える
③誰にでもできる。何も残らない満足の置きどころなら言える
④職人の世界は、人間関係がきつい位置なら言える
⑤建設は先細りだから、将来がないこれは、この先の話です

①の収入は求人票で確かめられる話で、⑤の先細りはこの先の話。「向き(向き方)」は、その仕事をしている人の興味がどちらを向いているかの値です。人と関わる・人を動かす・手を動かすなど、6つの側面から捉えています。この先の見出しと本文では、これを「関心」と呼びます。

② 「体を壊す」——事故率は測っていない。安全を重く見る度合いは37業界の下のほう

実際の事故率は公表されている統計の側にあって、何歳まで続けられるかも、働いている人に聞く領域です。建設技能・職人の「労働安全衛生」を大事にする度合いは、比較した37業界の中では下から6番目です。この数値が示しているのは、その仕事をしている人が、仕事選びで何を重く見ているかです。この業界の平均は、安全を大事にする度合いを、11項目の中で7番目に置いています。

③ 「何も残らない」——何が残るかは測っていない。重く見る上位は、手応えと専門性

建設技能・職人の重みの並びでは、1位が「やり遂げた手応え」で、「専門性が積み上がること」がわずかな差で続きます。ただしこれは、その仕事をしている人が何を重く見ているかの数値です。

誰にでもできる仕事かどうかも、このデータでは測っていません。「誰にでもできる」と言われて腹が立つ理由は、資格の話とは別のところにあるのだと思います。 手応えと専門性を仕事選びの上のほうに置いてきた人ほど、そこを見られていないと感じるのでしょう。

職業まで割っても、20職業のうち14職業で、この2項目が上位2に並びます。大工にいたっては、専門性を重く見る度合いが業界平均を大きく上回ります。専門性が上位3に入らないのは、鉄筋工・鉄骨工・解体工の3職業です。

④ 「人間関係がきつい」——人間関係は測っていない。人と関わる関心は社内SEと同じ高さ

特定の現場や会社の人間関係は、職場ごとの話です。建設技能・職人の人と関わる関心は、比較した37業界の中では下から10番目です(社内SEと同値)。人を説得して動かす関心も、37業界の下寄りにあります。

この数値が指しているのは、人柄ではなく、働く人の興味の向きです。 人とのやりとりで満たされたいと思って来た人は、この業界の平均の関心とは向きが違います。人と関わる場面がどれだけあるかより、そこに満足を求めているかどうかが、この業界の関心の形とずれるところです。


関心と大事にするものの値で当たるのは、人を動かす側に立ちたい人

  • 説得して人を動かす側に立ちたい人。人を説得して動かす関心は37業界の下から8番目で、20職業の中でも開きが小さいほうです
  • 安全を大事にする度合いを、仕事選びのいちばん上に置きたい人
  • 人と関わることで満たされたくて来た人

手応えと専門性を、仕事選びの上のほうに置いてきた人には、③は、大事にするものの側では当たりません。関心と、大事にするものの形で見て当たらないのは、次のような人です。

  • 一つ仕上げるたびに、手応えが残る仕事を探している人
  • 腕が上がっていく実感を、給料とは別に大事にしたい人
  • 他人の採点より、自分の目の基準を信じたい人

まとめ——腹を立てる前に、何を大事にしてきたかを言葉にする

  • 「何も残らない」は、満足の置きどころなら言える。ただし別の項目。満足の上位2が手応えと専門性。職業まで割っても、20職業のうち14職業で同じ2項目が上位2で、大工は専門性を重く見る度合いがとくに高い
  • 「人間関係」は職場ごとの話。人と関わる関心は37業界で下から10番目で、人と関わることで満たされたい動機とは方向が逆
  • 「体を壊す」は、位置なら言える。労働安全衛生を重視する度合いは37業界で下から6番目。事故率のほうは公表されている統計の側

自分が求めているのが、仕上げた手応えなのか、人との関係なのか。ここに自分の言葉で答えられるなら、「誰にでもできる」と言われても、もう腹を立てなくて済むと思います。「やめとけ」が正しいかどうかは、その後です。「何も残らない」と言われる仕事で、この業界の人が重く見るものの上位に置いているのは、仕上げた手応えと積み上がる専門性です。

そこが決まったら、建設技能・職人の転職エージェントの選び方へ。


関連ページ


建設技能・職人が出てくる「向き方から探す」のページ

この記事の根拠

判定の元になった数値

このデータが測っているのは、その仕事をしている人の興味の向きと仕事で大事にしたいことです。年収・労働時間・年齢・求人の数は測っていません(→このサイトのデータについて)。

数値が高いほど、その方向への興味が強いことを示します。

業界平均(向き方)

業界現実的研究的芸術的社会的企業的慣習的
建設技能・職人3.742.982.843.222.903.20
農林水産3.773.412.442.942.883.20
臨床検査・医療技術3.763.362.593.782.793.47
研究職3.704.142.683.283.203.01
メーカー技術職3.613.542.553.043.083.01
食品製造3.493.022.623.182.933.33
社内SE3.473.312.603.223.103.19
化学・素材・日用品製造3.443.032.822.822.853.11
ビルメンテナンス・施設管理3.372.812.303.302.823.37
製造技能(金属加工)3.322.992.472.742.673.07
組立・生産ライン3.522.832.452.652.643.07
物流・ドライバー3.182.612.402.872.543.20
一般事務・オフィスワーク3.022.692.483.352.923.40
士業2.603.262.263.863.493.50

太字は、比較した37業界の中での最高・最低です(0.01以内の差は同率として、両方を太字にしています)。

人と関わる向き方の順位(37業界の中で下から):組立・生産ライン 2.65 / 製造技能(金属加工)2.74 / 化学・素材・日用品製造 2.82 / 物流・ドライバー 2.87 / 農林水産 2.94 / メーカー技術職 3.04 / 管理部門(担当)3.13 / IT・エンジニア 3.15 / 食品製造 3.18 / 社内SE 3.22 / 建設技能・職人 3.22(下から10番目。社内SE 3.22 と同値)。

人を説得して動かす向き方の順位(37業界の中で下から):物流・ドライバー 2.54 / 組立・生産ライン 2.64 / 製造技能(金属加工)2.67 / 臨床検査・医療技術 2.79 / ビルメンテナンス・施設管理 2.82 / 化学・素材・日用品製造 2.85 / 農林水産 2.88 / 建設技能・職人 2.90(下から8番目)。

仕事価値観(建設技能・職人・11項目)

項目値37業界での位置
達成感(やり遂げた手応え)3.58上から14番目
専門性が積み上がること3.56中位
自律性(自分の裁量で決められること)3.41中位
自己成長3.40中位
良好な対人関係3.28中位
私生活との両立3.07下から7番目(IT・エンジニアと同値)
労働安全2.98下から6番目
奉仕貢献2.97下から15番目
雇用や生活の安定性2.89下から5番目
社会的認知2.84下から13番目
報酬2.84下から20番目

労働安全の順位(37業界の中で下から):物流・ドライバー 2.78 / 警察・消防・自衛隊 2.83 / 製造技能(金属加工)2.87 / ビルメンテナンス・施設管理 2.87 / 農林水産 2.88 / 建設技能・職人 2.98(下から6番目)。11項目の中で、労働安全衛生は業界ごとの差が小さいほうの項目(幅 0.89)です。

この11項目は「その仕事をしている人が、何をどれだけ重視しているか」の数値です。労働安全は実際の事故率ではなく、報酬も実際の給与額ではありません。

大工は専門性 4.00 が1位、解体工は上位3が自己成長 3.23/達成感 3.21/自律性 3.21 で、専門性が上位3に入りません。職種ごとの割り方は建設技能・職人に向いてる人へ。

20職業のうち、達成感と専門性が上位2に並ぶのは14職業。専門性が上位3に入らないのは、鉄筋工(5番目 3.31)・鉄骨工(4番目 3.17)・解体工(4番目 3.15)の3職業。

20職業の中での、人を説得して動かす向き方の幅は 0.51 です。最も高いのが大工 3.16、最も低いのが内装工 2.65(とび 2.66 と同率)。20業界の120通りの組み合わせの中で、下から9番目に狭い値になります。

建設技能・職人に含めた職業:測量士/CADオペレーター/大工/型枠大工/鉄筋工/鉄骨工/とび/建設機械オペレーター/建設・土木作業員/左官/建築板金/サッシ取付/内装工/建築塗装工/防水工/電気工事士/配管工/送電線工事/解体工/造園工の20職業の平均です。

このデータに含まれていないもの:収入・日給や月給の形・労働時間・休日数・求人数・年齢構成・実際の事故率・資格の種類や取得の難易度・元請と下請の関係・季節や天候による稼働の変動・これからの仕事量。

近い業界の出し方:上の表の6つの向き方を業界どうしで見比べ、離れ方が小さい順に並べたものです。建設技能・職人に最も近いのは食品製造 0.363、次が化学・素材・日用品製造 0.513。

出典:厚生労働省 職業情報提供サイト(日本版O-NET)「job tag」簡易版数値系ダウンロードデータ ver.7.00(最終更新 2026年3月17日/制作・著作:独立行政法人 労働政策研究・研修機構)