公務員は「やめとけ」と言われる——どこまで本当か

「安定していると言われるのに、続けるなという話ばかり出てくる」 「このまま残ると潰しが効かなくなる、と何度も言われた」 「辞めたほうがいいのか、辞めても何も残らないのか」

「やめとけ」の理由は読むたびに増えるのに、自分に当てはまるのかは分からない。 そんな経験がある人も多いのではないでしょうか。

「やめとけ」は、雑な言葉です。 中身が5つくらい混ざっていて、そのうち2つは、このデータでは答えられません。

先に、分けます。


最初に——このデータで答えられないこと

この記事が使うのは、厚生労働省の「job tag」に入っている職業別の調査データです。 実際にその仕事をしている人が、どんな方向に興味を持っているかと、何を大事にしているかが入っています。

逆にいうと、次のことは測っていません。

  • 給与がどう決まるか、いくらか
  • 昇進や役職が、どういう順で回ってくるか
  • 異動や配属を、どこまで自分で選べるか
  • 採用試験の内容や、どれくらい難しいか

「公務員はやめとけ」の理由の多くは、この4つです。 そこは答えられないと、先に書いておきます。

そのうえで、答えられる3つが、この仕事の選び方そのものに関わります。


「やめとけ」の中身は、だいたい5つです

#言われていること数値との関係
給料が上がらない/年功で決まる答えられない
異動も昇進も自分で選べない答えられない
潰しが効かない、民間で通用しない距離の側からは、当たりません
前例主義で、手順ばかり業界平均としては当たっています。ただし条件つき
どうせ「公務員」はどれも同じ違う。ここが最大のズレ

③ 「潰しが効かない」——距離の側からは、当たりません

先に、意外なほうから書きます。

このサイトでは、37業界それぞれの興味の形を6つの領域の数値にして、業界どうしがどれだけ離れているかを距離で出しています。

公務員(行政)に最も近い業界は2つあって、距離はどちらも 0.47 でした。法律・会計(弁護士・会計士)と、金融です。

上位2つが、どちらも民間の業界でした。

比べる相手を置くと、意味がはっきりします。 37業界の中で最も孤立しているのは研究職とコンサルで、最も近い相手までの距離が 0.68 あります。公務員は、そこまで離れていません。 3番目に近い警察・消防・自衛隊も 0.49 です。

「潰しが効かない」と言われるとき、多くは求人や経歴の話をしています。 それは測っていません。ただ、興味の形の側から見ると、地続きの隣が無い業界ではありません。

むしろ隣にいるのが役所の外だった——ここは、動く前に見ておいていい点です。


④ 「前例主義」——業界平均としては当たっています

決まった手順を正確に回すことへの向き方は、業界平均で 3.46。37業界の中で6番目でした。上位に入ります。

手順が仕事の中心にあるのは、数値のとおりです。

ただし、ここには条件がつきます。

この領域は、業界の中で 1.43 開いています。 37業界の平均どうしの幅は 0.89 しかありません。

業界の中のほうが、業界どうしより開いている。 つまり——「公務員は前例主義だ」は、業界名では言えません。

手順が厳密に決まっている職種と、ほとんど決まっていない職種が、同じ業界の中にあります。 その差が、この 1.43 です。

「手順に耐えられなかった」と感じたとき、それが公務という仕事への向き不向きなのか、その配属への向き不向きなのかは、分けて考えられます。


⑤ 「公務員はどれも同じ」——違います

これが、この記事でいちばん重要なところです。

公務員(行政)として収録されている6職種を並べると、「人と関わることへの向き方」が 1.92 開いていました。

最も高いのは労働基準監督官、最も低いのは国際公務員です。

この幅は、37業界それぞれの「業界の中で最も開いた領域の幅」を並べると1位でした(2位は 研究職の 1.83)。

さらに、37業界の平均どうしを並べたときの幅は 1.55。 業界の中のほうが、業界どうしより開いています。

つまり——同じ「公務員」の中に、人と関わる比重が最上位の仕事と、いちばん遠い仕事が、両方入っています。

「公務員に向いていなかった」という言い方は、この業界ではほとんど意味を持ちません。 6職種でどう割れるかは、公務員に向いてる人にまとめました。


ついでに——「安定しか無い」について

もうひとつ、よく言われることに触れておきます。

先に線を引きます。このデータは、実際に安定しているかを測っていません。 測れているのは、その仕事をしている人が、雇用や生活の安定性をどれだけ重く見ているかだけです。混ぜないでください。

そのうえで見ると、公務員(行政)は 3.80 で、37業界の中で2番目でした。上にいるのは警察・消防・自衛隊だけです。

「安定を重く見ている人が集まっている」——ここは数値のとおりです。

ただし、上位はそれだけではありません。 3位は奉仕・社会貢献 3.50 で、37業界の9番目。 私生活との両立 3.41 も5番目に入ります。

一方、2位の専門性 3.65 は、37業界では20番目——ほぼ真ん中でした。業界の中では2位なのに、業界どうしで並べると平均的な位置にいます。

「安定しか無い」ではなく、「積み上がる側が真ん中に落ちる」——そう言ったほうが数値には近い形です。


「やめとけ」が当たる人と、当たらない人

当たりやすいのは、こういう人です。

  • 形の外に出て、自分の表現として何かを作りたい人。 表現することへの向き方 2.44 は37業界の下から8番目です
  • 専門性が積み上がることを、いちばん上に置いている人。 業界の中では2位ですが、37業界では20番目でした
  • 業界名を手がかりに、自分の向き不向きを決めたい人。 この業界では、それがいちばん効きません

当たらないのは、こういう人です。

  • 同じ場所に長くいられることを、価値の側に数えている人
  • 自分の仕事が、誰かの生活の土台になっていることに意味を感じる人。 奉仕・社会貢献 3.50 は37業界で9番目です
  • 配属が合わなかっただけの人。 それは業界ではなく、6職種のどれにいたかの話です

「やめとけ」と言っている人が間違っているわけではありません。 その人にとっては本当だった、というだけです。ただ、この業界では「その人」と「自分」の距離が、他の業界より大きく開きます。


まとめ

  • このデータでは、給与・昇進・異動・採用試験は答えられない
  • 「潰しが効かない」は距離の側からは当たらない。 最も近い2業界はどちらも 0.47 で、しかもどちらも民間
  • 「前例主義」は業界平均としては当たっている。 手順への向き方 3.46 は37業界で6番目
  • ただし業界名では言えない。 その領域は業界の中で 1.43 開き、業界どうしの幅 0.89 を超える
  • 「公務員はどれも同じ」は違う。 人と関わる向き方は業界の中で 1.92 開き、37業界で1位

決めるべきなのは、「やめとけ」が正しいかどうかではありません。合っていないのが公務という仕事なのか、その配属だったのかです。


関連ページ


この記事の根拠

数値が高いほど、その方向への興味が強いことを示します。

業界平均(職業興味・RIASEC)

業界現実的研究的芸術的社会的企業的慣習的
公務員(行政)3.113.242.443.583.103.46
法律・会計(弁護士・会計士)2.963.552.453.623.363.28
金融3.063.422.343.593.423.19
警察・消防・自衛隊3.433.042.183.753.133.47
管理部門(担当)3.092.982.473.133.223.36
一般事務・オフィスワーク3.022.692.483.352.923.40
管理部門(課長級)3.253.122.323.733.783.58
コンサル2.893.192.653.493.632.69

太字はこの表の中での最大・最小で、慣習的 3.58 と 2.69 は37業界でも最高と最低です。

37業界での位置(公務員(行政)):慣習的 3.46 は6番目(上は 管理部門(課長級)3.58/士業 3.50/鉄道・航空・海運 3.48/警察・消防・自衛隊 3.47/臨床検査・医療技術 3.47)。研究的 3.24 は17番目。社会的 3.58 も17番目。現実的 3.11 は26番目。企業的 3.10 は18番目。芸術的 2.44 は下から8番目(農林水産と同値)。

仕事価値観(11項目・公務員(行政))

項目37業界での位置
雇用や生活の安定性3.802番目
専門性3.6520番目
奉仕・社会貢献3.509番目
自己成長3.4918番目
私生活との両立3.415番目(農林水産と同値)
自律性3.3621番目
労働安全衛生3.3215番目
達成感3.3026番目
社会的認知3.237番目(警察・消防・自衛隊と同値)
良好な対人関係3.1629番目
報酬3.0015番目

これは「実際にどうか」ではなく「その仕事をしている人が何を重く見ているか」の数値です。 実際の雇用条件・年収・労働時間は、このデータには入っていません。

雇用や生活の安定性の上位5業界:警察・消防・自衛隊 4.09/公務員(行政)3.80/医師・歯科医師 3.69/金融 3.62/研究職 3.59。

「積み上がる系」の4項目:本サイトでは達成感・自律性・専門性・自己成長の4項目をこう呼んでいます。公務員(行政)では、この4項目の37業界での順位が 26番目・21番目・20番目・18番目で、いずれも真ん中付近に落ちます。

業界内の幅:公務員(行政)の中で最も開くのは、人と関わる向き方の 1.92(労働基準監督官 4.74 ←→ 国際公務員 2.82)。37業界それぞれの「業界の中で最も開いた領域の幅」を並べると1位です(2位は 研究職 1.83、3位は 金融 1.79)。次に開くのは 決まった手順を回す向き方の 1.43(労働基準監督官 4.32 ←→ 社会教育主事 2.89)。職種ごとの内訳は 公務員に向いてる人 にあります。

比較に使った37業界の幅:人と関わることは リハビリ・治療 4.20 ←→ 組立・生産ライン 2.65 で 1.55。決まった手順を回すことは 管理部門(課長級)3.58 ←→ コンサル 2.69 で 0.89

業界間の距離:6領域の値をそのままユークリッド距離で算出したものです。上の表の数値から再現できます。 公務員(行政)は 法律・会計(弁護士・会計士)0.469、金融 0.469、警察・消防・自衛隊 0.490。37業界666ペアの中で「最も近い相手までの距離」が最大なのは 研究職 0.676 と コンサル 0.676(3位は リハビリ・治療 0.660、4位は 臨床検査・医療技術 0.618、5位は 士業 0.610)。

公務員(行政)に含めた職業:国家公務員(行政事務)/地方公務員(行政事務)/税務事務官/国際公務員/社会教育主事/労働基準監督官の6職業の平均です。警察官・消防官・自衛官・刑務官・海上保安官・麻薬取締官は、警察・消防・自衛隊のほうに分けており、こちらでは数えていません。

このデータに含まれていないもの:年収・給与の決まり方・労働時間・求人数・採用試験の内容や難易度・倍率・職階や役職・異動や配属の仕組み・退職金や年金の制度。本文で「答えられない」「測っていない」と書いた項目は、すべてこれに当たります。

出典:厚生労働省 職業情報提供サイト(日本版O-NET)「job tag」簡易版数値系ダウンロードデータ ver.7.00(最終更新 2026年2月10日/制作・著作:独立行政法人 労働政策研究・研修機構)