エンジニアの転職エージェント、「IT向き」では選べない——9職種で、形が割れる

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読む順(10項目)

「このまま今の現場にいて、5年後どうなっているんだろう」 「エージェントって、結局どこも同じじゃないのか」 「そもそも自分の経歴で、まともに相手にしてもらえるのか」

転職サイトを開いたまま、何も検索せずに閉じた。そういう日が続くのは意志が弱いからではなくて、判断の材料が足りていないだけだと思います。

決めておくことは1つだけです。IT業界の中で、自分がどのタイプに近いのか。


30秒でわかること

37業界の中で高い
調べて突き止める8位
37業界の中で低い
決まった手順を正確に回す34位

年収・労働時間・求人数は測っていません。読み方

読むことと触ることが、セットになっている人

調べ始めると時間を忘れる人は、この業界と噛み合います。ただ、調べるだけでは足りなくて、手元で動かして確かめないと気が済まない人、読むことと触ることがセットになっている人が、いちばん中心にいます。「なぜ動かないのか」が分かるまで帰りたくない人も同じで、原因が特定できた瞬間そのものに手応えがあるなら、それはこの仕事の芯にあるものです。

技術が自分の中に溜まっていく感覚を、役職より上に置ける人。満足の中心はここにあります。

一方で、人と話して物事が前に動いた日を「いい一日だった」と感じる人は、同じIT業界でも見る職種が変わります。手順が決まっていないと落ち着かない人も、仕様が固まらないまま走る現場では消耗しがちです。

9職種のどれに近いかは、エンジニアに向いてる人へ。


まず3つの質問。だいたいここで分かれます

深く考えず、直感で構いません。

Q1. 調べものをしているとき、どちらに近いか

  • A:調べ始めると時間を忘れる。答えが出た後も、周辺を読んでいる
  • B:調べるのは目的のため。答えが出たら、そこで終わる

Q2. 1日を振り返って、充実していたと感じるのはどちらか

  • A:一人で集中していた時間が長かった日
  • B:人と話して、物事が前に動いた日

Q3. 仕事の進め方について、どちらが近いか

  • A:やり方が決まっていないほうが、動きやすい
  • B:手順が決まっていないと、落ち着かない

結果

回答近いタイプ職種の傾向
Q1=A・Q2=A突き止めたい人データサイエンティスト、プログラマー
Q1=B・Q2=B動かしたい人プロジェクトマネージャ
Q2=B・技術も見たいつなぎたい人基盤システムのエンジニア
Q3=B が強い支えたい人運用・管理、ヘルプデスク

プログラマーとプロジェクトマネージャで、向きはほぼ逆

エンジニア転職の記事には、だいたいこう書いてあります。

「論理的思考が得意な人」「モノづくりが好きな人」がIT業界に向いています

これはほとんど何も言っていません。IT・エンジニアに入る9職業を並べると、ひとつの傾向にまとまらないんです。

向き(向き方)と書いているのは、興味の傾きの強さのことです。プログラマーは、調べて突き止めることへの向き方が業界内で最も強い部類です。人と関わる向き方のほうは、業界内で最も低いグループに入ります。調べ始めると止まらないタイプで、人と話す場面が多い日ほど消耗しやすい、そういう人に合う職種です。

プロジェクトマネージャは、ほぼ逆でした。調べて突き止めることへの向き方は業界内で最も弱く、人と関わることへの向き方は業界内で最も高い層に入ります。基盤システムのエンジニアに次いで2番目です。一人で深く潜るより、人が動いて物事が前に進むのを見ているほうに手応えを感じるタイプです。ひと括りにした瞬間に、この差が消えます。

「手を動かすのが好き」は、建設のほうが強い

エンジニアを検討している人がよく使う言葉に「手を動かすのが好き」がありますが、これだけではITに絞り込めません。「作る仕事が好き」で探し始めると、建設・施工管理と同じ棚に並びます。分かれ目は別のところにありました。

  • IT・エンジニア — 調べて、突き止めて、形にする。一人で潜ることに比重が置かれる
  • 建設・施工管理 — 現場で人を動かして、形にする。その場に人がいることに比重が置かれる

同じ「作る仕事」でも、一人で潜るほうが力が出るのか、人が周りにいるほうが力が出るのか。確かめるべきなのは「手を動かすのが好きか」ではなくて、「調べて突き止めている時間が、苦にならないか」のほうです。

「安定して働きたい」——満足の2番目までに安定が来るのは3職種

IT・エンジニア系の職業は、ほぼすべてで「専門性が積み上がること」が1位です。 ただ、はっきりした例外が3つあります。運用・管理、ヘルプデスク、基盤システムのエンジニア。この3つだけ、「働く環境の安全さ」や「雇用や生活の安定」をどれだけ大事にしているかが、2番目までに来ました。他のIT職種では、真ん中あたりに来る項目です。

「エンジニアは激務」で判断する前に、自分がどちらを求めているのかを先に決めたほうが早いと思います。


この3つに当てはまるなら、消耗しやすくなります

① 人と話しているときがいちばん調子がいい人

IT・エンジニアは、人と関わることへの向き方が、営業や医療・介護と比べて明確に低い層です。ただ業界内にも幅があって、プロジェクトマネージャや基盤システムのエンジニアは、人と関わる量でいえば施工管理と同水準でした。IT業界を諦める前に、職種を変える手があります。

② やり方が決まっていないと落ち着かない人

IT・エンジニアは、決まった手順を正確に回すことへの向き方が低い層です。とくにスマホアプリの開発は業界内で最も低い。面談で「この職場では、仕様が決まってから着手しますか」を1つ聞いておけば、受託開発と自社サービス開発の違いが出ます。

③ 作ったものがどう見えるかが、いちばんの動機の人

表現することへの向き方は、マーケティングや建築設計と比べて低めです。「自分が作ったものを人がどう受け取るか」が動機の中心だと、開発職では手応えを感じにくくなることがあります。この場合も業界を変える必要はなくて、同じIT業界の中に、Webデザイナーやマーケティング寄りの職種があります。面談では「作ったものの反応を、どこまで見られますか」と聞いてみてください。

別の業界で面接官をしていたときの話

落ちていたのは「向いていない人」ではありませんでした。自分がどちら側なのかを言葉にできていない人でした。

「なぜこの職種ですか」と聞いて、一段掘ると答えが続かない。適性が無いのではなく、整理されていないだけのことが多かったと思っています。


エージェントの選び方——2軸で見る

IT業界の中身は、4つに割れています。エージェント選びで先に見たいのは、その割れ目が相手に見えているかどうか。知名度と求人数を見るのは、そこから先です。

業界の解像度扱う求人のレンジ
総合型低い広いが、業界の外へ流れやすい
特化型(上位帯)高い上に偏る
特化型(幅広)高い広い

この2軸は公的データではなく、運営者自身の転職1回分の経験から立てた見方です(→転職エージェントを使うメリット)。

私はこの2軸で、失敗と成功の両方をしました。

エンジニア転職で先に効くのは、1軸目のほうだと思います。冒頭の4タイプが伝わらない相手には「エンジニア志望」とだけ伝わって、職種の分岐はそこで落ちます。


この業界で、いま紹介できるエージェント

提携できているのは、いま1社だけです。

上の2軸でいえば、この1社は「特化型」にあたります。この記事で見てきた4タイプのどれに近いかは、面談の最初にご自身から伝えてください。伝え方に迷うなら「仕様が決まってから着手しますか」の1問から入ると、どのタイプに近いかが伝わると同時に、相手の解像度も測れます。


ここまで読んで、たいてい出てくる2つの疑問

Q. 転職するか決まっていない段階で、登録してもいいですか

決まっていなくても構いません。ただし、面談の日程が取れない時期なら、登録を急ぐ必要はありません。上のカードに書いたとおり、面談まで進まないと双方の時間が無駄になります。迷っている段階なら、まずエンジニアは「やめとけ」と言われる理由のほうが早いです。

Q. 総合型と特化型、どちらに登録すべきですか

決めなくて構いません。総合型は市場の全体像、特化型は自分の位置と、見えるものが違います。片方で足りないと感じたときにもう片方を足せば十分で、最初から複数に登録する必要はありません。


まとめ——決めるのは、一人で潜るか、人を動かすか

  • 「IT業界に向いている人」という括りは、実は成立していない。プログラマーとプロジェクトマネージャは、興味の方向がほぼ逆
  • IT業界の中に、専門性を積み上げる職種と、安定して働く職種が分かれて存在している
  • エージェント選びは「業界の解像度」と「扱う求人のレンジ」の2軸。合わないと分かるのは1〜2回目の面談で、そこで粘っても、扱っている求人のレンジは変わらない

先に決めるのは、IT業界の中で自分がどちら側なのか。登録先はその後です。

これを言えないまま面談に行くと、たぶん最初に聞かれて詰まるのがここです。


次に読むもの

近い業界(興味の形の近さで、転職しやすさではありません)

  • メーカー技術職——37業界の中で最も近い相手の1つ
  • 社内SE——ほぼ同じ近さ。違うのは「決まった手順を回すこと」への向き方

37業界を1枚の表で見るなら、業界別の向き・不向き一覧へ。


IT・エンジニアが出てくる「向き方から探す」のページ

この記事の根拠

並べた数値を見る

数値が高いほど、その方向への興味が強いことを示します。

現実的研究的芸術的社会的企業的慣習的手を動かす調べて突き止める表現する人と関わる人を動かす手順を正確に回す3.453.422.753.153.172.93中心2.0/外周4.5(0.5刻み)
図:IT・エンジニアの職業興味6領域(中心2.0・外周4.5/0.5刻み)

「IT業界に向いている人」が成立しないことを、形で見る

現実的研究的芸術的社会的企業的慣習的手を動かす調べて突き止める表現する人と関わる人を動かす手順を正確に回す
図1:職業興味6領域の比較。青がプログラマー、オレンジがプロジェクトマネージャ(IT)。外側の六角形が4.0、中心が2.0を表す。同じIT業界の2職種でも、研究的(調べて突き止める)と社会的(人と関わる)で向きが入れ替わっている

プログラマーは右上に、プロジェクトマネージャは左下に伸びています。重ねると、ほぼ裏返しの形です。

IT・エンジニア系9職業の平均:現実的 3.45/研究的 3.42/芸術的 2.75/社会的 3.15/企業的 3.17/慣習的 2.93

運用・管理(IT)は社内SE側に収録している職業で、上の平均には入っていません。

職業現実的研究的芸術的社会的企業的慣習的
プログラマー3.753.762.732.902.883.12
プロジェクトマネージャ(IT)3.572.862.523.433.392.91
データサイエンティスト3.363.852.723.033.212.72
運用・管理(IT)3.603.322.632.822.903.15
システムエンジニア(基盤システム)3.453.352.763.483.413.12
ソフトウェア開発(スマホアプリ)3.323.402.972.793.032.61

4つのタイプが、どこに立っているか

3.03.54.03.03.54.0社会的(人と関わる)→研究的(調べて突き止める)→データサイエンティストプログラマースマホアプリ開発運用・管理(IT)基盤システムのSEプロジェクトマネージャマーケティング建設・施工管理営業医療・介護・保育
図2:横軸が社会的(人と関わる方向)、縦軸が研究的(調べて突き止める方向)。青がIT・エンジニア系の6職種、灰色が比較した他業界。IT業界の6職種は左上から右下まで散らばっていて、ひとつの塊になっていない

冒頭の3つの質問は、この図のどこに立っているかを聞いています。左上が「突き止めたい人」、右下が「動かしたい人」。そして右へ行くほど、IT業界の外(営業・医療介護)に近づきます。

業界現実的研究的芸術的社会的
建設・施工管理3.583.132.763.46
営業3.022.972.583.84
医療・介護・保育3.072.942.594.11
マーケティング3.073.433.223.44

満足の2番目までに安定が入るのは、3職種だけ

上位が「専門性」または「達成感」の8職種プログラマーSE(受託開発)SE(Webサービス)SE(組込み・IoT)パッケージ開発スマホアプリ開発データサイエンティストプロジェクトマネージャ「安定」が上位3項目に入る3職種基盤システムのSE運用・管理(IT)ヘルプデスク(IT)雇用や生活の安定性 3.33労働安全衛生 3.22労働安全衛生 3.20
図3:仕事価値観の上位3項目に何が来るか。IT系の大半は専門性か達成感が上位に来るが、下段の3職種だけ、2番目までに雇用や生活の安定性・労働安全衛生が入る

上段と下段は、同じ「IT業界」です。求人票の職種名だけでは、この線は見えません。

職業上位3項目
運用・管理(IT)専門性 3.47/労働安全衛生 3.22/良好な対人関係 3.07
ヘルプデスク(IT)労働安全衛生 3.20/良好な対人関係 3.12/専門性 3.10・私生活との両立 3.10(同値)
システムエンジニア(基盤システム)専門性 3.45/雇用や生活の安定性 3.33/達成感 3.24

このデータに含まれていないもの:年収・労働時間・残業や休日数・求人数・使用する言語やフレームワーク・スキルの習得しやすさ・業界の将来性・年齢による採用の傾向。数値はすべて業界の平均です。

業界間の距離(6つの向きの値がどれだけ離れているか。小さいほど近い):メーカー技術職 0.326、社内SE 0.335(差が0.01以内なので同率)。

出典:厚生労働省 職業情報提供サイト(日本版O-NET)「job tag」簡易版数値系ダウンロードデータ ver.7.00(最終更新 2026年3月17日/制作・著作:独立行政法人 労働政策研究・研修機構)