「公務員としてやってきたことを、どう説明すればいいのか分からない」 「面談で『公務員の方ですね』と言われて、そこから先に話が進まなかった」 「同じ庁舎にいた同期と、やっていた仕事はまるで違ったのに」
「公務員」の一語で、全部まとめられてしまう。 そんな経験がある人も多いのではないでしょうか。
これは相手の力不足だけの話ではありません。 厚生労働省のデータで37業界を並べると、この業界は「ひとくくりにできない度合い」が最も大きい業界でした。
この記事では、そこを数値で分けます。
向いているのは、こういう人です
決められた手順を、決められたとおりに回すことが苦にならない人。 ここはこの業界に共通しています。手順そのものが仕事の品質になる場面が多く残ります。
自分の仕事が、誰かの生活の土台になっていることに意味を感じる人も噛み合います。相手の顔が見えないまま、制度として届く形の仕事です。
同じ場所に長くいられることを、価値の側に数える人。 満足の置きどころが、そこにあります。
逆に、形の外に出て、自分の表現として何かを作りたい人は物足りなくなりがちです。「調べて突き止める」比重の高さを求めて入る人も、配属によっては外します。
そして——「公務員だったので」という説明のまま、次を探そうとしている人。 ここがこの記事のいちばん重要なところで、あとで詳しく書きます。
この業界は、業界名では決まりません。 次から説明します。
業界の中の差が、37業界でいちばん大きい
厚生労働省が運営する職業情報提供サイト「job tag」には、約500の職業について、実際にその仕事をしている人がどんな方向に興味を持っているかの調査結果が入っています。
このサイトは、公務員(行政)として6つの職種を収録しています。 その6つを「人と関わることへの向き方」で並べると、最も高い職種と最も低い職種の差は 1.92 ありました。
37業界それぞれについて「業界の中で最も開いた領域の幅」を出して並べると、この 1.92 が1位です(2位は研究職の 1.83)。
比べる相手を変えると、意味がはっきりします。 37業界の平均どうしを並べたとき、この領域の最高と最低の差は 1.55。
業界の中のほうが、業界どうしより開いています。
つまり——「公務員は人と関わる仕事か」という問いに、業界名では答えが出ません。 どの職種に就いていたかで決まります。
手順を回すほうにも、同じことが起きています
決まった手順を正確に回すことへの向き方は、業界平均で 3.46。37業界の中で6番目でした。上位に入ります。
ところが、この領域も業界の中で 1.43 開いています。 37業界の平均どうしの幅は 0.89 しかありません。
ここでも、業界の中のほうが大きい。
「公務員は前例主義だ」も、業界名では言えません。 手順が厳密に決まっている職種と、決まっていない職種が、同じ業界の中に入っています。
職種ごとにどう割れるかは、公務員に向いてる人のほうで分けました。
満足の中心は、続けられることでした
job tagには、その仕事をしている人が何を大事にしているかのデータも入っています。11項目のうち、上位に何が来るかを見ます。
1位は雇用や生活の安定性で 3.80。37業界の中で2番目でした。上にいるのは警察・消防・自衛隊だけです。
3位は奉仕・社会貢献 3.50 で、37業界の9番目。 私生活との両立 3.41 も5番目に入ります(農林水産と同値)。
続けられることと、私生活が残ること。 この2つが上のほうに来ます。
注意が要るのは2位です。専門性 3.65 は、37業界の中では20番目——ほぼ真ん中でした。業界の中では2位なのに、業界どうしで並べると平均的な位置にいます。
「専門性が積み上がるかどうか」も、この業界名では保証されません。
この3つに当てはまるなら、消耗しやすくなります
① 形の外に出て、自分の表現として何かを作りたい人
表現することへの向き方は 2.44 で、37業界の下から8番目でした(農林水産と同値)。
決められた様式が先にあります。 そこを崩すことが評価される場面は多くありません。
② 「調べて突き止める」比重の高さを求めている人
この向き方の業界平均は 3.24 で、37業界の中では17番目。 真ん中です。
しかも、業界の中で 1.40 開いています。 どの職種に就くかで、まったく別の値になります。業界を選んでも、この点は決まりません。
③ 「公務員だったので」という説明のまま、次を探そうとしている人
ここがこの業界の最大の消耗点です。
上に書いたとおり、この業界は業界名で括ると中身が消えます。 面談で「公務員です」とだけ伝えると、相手はこの業界の平均像を思い浮かべます。 そして平均像は、6職種のどれとも一致しません。
自分がどの側にいたのかを、言葉にしてから面談に行く。 それだけで、返ってくる求人が変わります。
エージェントの選び方——2軸で見る
エージェント選びで見るべきなのは、知名度でも求人数でもありません。 次の2軸です。
| 業界の解像度 | 扱う求人のレンジ | |
|---|---|---|
| 総合型 | 低い | 広いが、業界の外へ流れやすい |
| 特化型(上位帯) | 高い | 上に偏る |
| 特化型(幅広) | 高い | 広い |
解像度が低い相手には、この業界の中で仕事がどう分かれるかが伝わりません。 レンジが合わない相手だと、解像度が高くても「ご経歴では難しい」で止まります。片方だけでは足りない、というのがこの2軸です。
公務員では、1軸目の中身が他の業界と違います。 見るべきなのは制度の知識量ではなく、「公務員の方ですね」で止めずに、どの職種をやっていたかで分けて聞けるかどうかです。業界の中の差が37業界でいちばん大きいので、分けられない相手に当たると、平均像に合わせた求人だけが並びます。 面談で「私の職務内容を、公務員という枠を外して説明すると、どういう仕事になりますか」と1つ聞けば、言い換えられるかどうかで分かります。
この2軸をどう見分けるかは、転職エージェントを使うメリットに書いています——解像度が低い相手に流された話と、レンジが合わずに断られた話の両方があります。
まとめ——面談に行く前に、1つだけ決めておく
- 人と関わることへの向き方は、業界の中で 1.92 開く。 37業界それぞれの「業界の中で最も開いた領域の幅」を並べると1位
- その 1.92 は、37業界の平均どうしの幅 1.55 より大きい。 業界名では決まらない
- 手順を回す向き方も同じ形。 業界平均 3.46 は37業界で6番目だが、業界の中で 1.43 割れる
- 満足の1位は雇用や生活の安定性 3.80 で、37業界の2番目
- 2位の専門性 3.65 は、37業界では20番目。 積み上がるかどうかは業界名で決まらない
決めるべきなのは、どのエージェントに登録するかではありません。自分がやっていたのは、6つのうちどの側の仕事だったのかです。
いま動くかどうかは、決めなくていいです。
ただ、そこだけは、面談に行く前に言葉にしておいたほうがいい。
もっと詳しく
- 公務員に向いてる人——6つの職種で、どこが割れてどこが揃うか
- 公務員は「やめとけ」と言われる理由——言われていることが、どこまで数値と合うか
- 転職エージェントを使うメリット——面接官の側から見た話。全業界に共通する部分をまとめています
- 業界別の向き・不向き一覧——37業界を1枚の表で
- このサイトのデータについて——数値の出典と、測っていないこと
近い業界
同じデータで37業界の距離を測った結果です。
最も近いのは法律・会計(弁護士・会計士)と金融で、距離はどちらも 0.47 でした。3番目が警察・消防・自衛隊で 0.49 です。
上位2つが、どちらも民間の業界だったところは、見ておいていい点です。 興味の形の側から見ると、この業界の隣は役所の外にあります。
この記事の根拠
数値が高いほど、その方向への興味が強いことを示します。
業界平均(職業興味・RIASEC)
| 業界 | 現実的 | 研究的 | 芸術的 | 社会的 | 企業的 | 慣習的 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 公務員(行政) | 3.11 | 3.24 | 2.44 | 3.58 | 3.10 | 3.46 |
| 法律・会計(弁護士・会計士) | 2.96 | 3.55 | 2.45 | 3.62 | 3.36 | 3.28 |
| 金融 | 3.06 | 3.42 | 2.34 | 3.59 | 3.42 | 3.19 |
| 警察・消防・自衛隊 | 3.43 | 3.04 | 2.18 | 3.75 | 3.13 | 3.47 |
| 士業 | 2.60 | 3.26 | 2.26 | 3.86 | 3.49 | 3.50 |
| 管理部門(担当) | 3.09 | 2.98 | 2.47 | 3.13 | 3.22 | 3.36 |
| 一般事務・オフィスワーク | 3.02 | 2.69 | 2.48 | 3.35 | 2.92 | 3.40 |
| 教育 | 3.19 | 3.35 | 3.20 | 3.92 | 3.30 | 3.16 |
| 物流・ドライバー | 3.18 | 2.61 | 2.40 | 2.87 | 2.54 | 3.20 |
太字はこの表の中での最小値であって、37業界での最小とは限りません(芸術的 2.18 と 企業的 2.54 と 研究的 2.61 は37業界でも最低、現実的 2.60 も37業界で最低です)。
37業界での位置(公務員(行政)):慣習的 3.46 は6番目(上は 管理部門(課長級)3.58/士業 3.50/鉄道・航空・海運 3.48/警察・消防・自衛隊 3.47/臨床検査・医療技術 3.47)。研究的 3.24 は17番目。社会的 3.58 も17番目。現実的 3.11 は26番目。企業的 3.10 は18番目(社内SE・美容・理容と同値)。芸術的 2.44 は下から8番目(農林水産と同値。下は 警察・消防・自衛隊 2.18/士業 2.26/ビルメンテナンス・施設管理 2.30/管理部門(課長級)2.32/金融 2.34/物流・ドライバー 2.40/鉄道・航空・海運 2.43)。
仕事価値観(11項目・公務員(行政))
| 項目 | 値 | 37業界での位置 |
|---|---|---|
| 雇用や生活の安定性 | 3.80 | 2番目 |
| 専門性 | 3.65 | 20番目 |
| 奉仕・社会貢献 | 3.50 | 9番目 |
| 自己成長 | 3.49 | 18番目 |
| 私生活との両立 | 3.41 | 5番目(農林水産と同値) |
| 自律性 | 3.36 | 21番目 |
| 労働安全衛生 | 3.32 | 15番目 |
| 達成感 | 3.30 | 26番目 |
| 社会的認知 | 3.23 | 7番目(警察・消防・自衛隊と同値) |
| 良好な対人関係 | 3.16 | 29番目 |
| 報酬 | 3.00 | 15番目 |
雇用や生活の安定性で上にいるのは1業界だけ:警察・消防・自衛隊 4.09。下に続くのは 医師・歯科医師 3.69/金融 3.62/研究職 3.59 です。
業界内の幅:公務員(行政)の中で最も開くのは、人と関わることへの向き方の 1.92(労働基準監督官 4.74 ←→ 国際公務員 2.82)。37業界それぞれの「業界の中で最も開いた領域の幅」を並べると、これが1位です(2位は 研究職 1.83、3位は 金融 1.79、4位は 教育 1.69、5位は 美容・理容 1.61)。次に開くのは 決まった手順を回す向き方の 1.43(労働基準監督官 4.32 ←→ 社会教育主事 2.89)、その次が 調べて突き止める向き方の 1.40(労働基準監督官 4.26 ←→ 地方公務員(行政事務)2.86)。職種ごとの内訳は 公務員に向いてる人 にあります。
比較に使った37業界の幅:人と関わることは リハビリ・治療 4.20 ←→ 組立・生産ライン 2.65 で 1.55。決まった手順を回すことは 管理部門(課長級)3.58 ←→ コンサル 2.69 で 0.89。
業界間の距離:6領域の値をそのままユークリッド距離で算出したものです。上の表の数値から再現できます。 公務員(行政)は 法律・会計(弁護士・会計士)0.469、金融 0.469、警察・消防・自衛隊 0.490。
公務員(行政)に含めた職業:国家公務員(行政事務)/地方公務員(行政事務)/税務事務官/国際公務員/社会教育主事/労働基準監督官の6職業の平均です。
警察官・消防官・自衛官・刑務官・海上保安官・麻薬取締官は、警察・消防・自衛隊のほうに分けています。 重複を避けるため、こちらでは数えていません。
このデータに含まれていないもの:年収・労働時間・求人数・採用試験の内容や難易度・倍率・職階や役職・異動や配属の仕組み・退職金や年金の制度。本文で「答えられない」「測っていない」と書いた項目は、すべてこれに当たります。
出典:厚生労働省 職業情報提供サイト(日本版O-NET)「job tag」簡易版数値系ダウンロードデータ ver.7.00(最終更新 2026年2月10日/制作・著作:独立行政法人 労働政策研究・研修機構)
