社内SEは「やめとけ」と言われる——どこまで本当か

「社内SEは楽だと言われるが、キャリアが止まると言われる」 「情シスは雑用係だ、という書き込みを見た」 「客先常駐から逃げたいだけなのかもしれない」

求人票を開いたまま、何も応募せずに閉じた。 そんな日がある人も多いのではないでしょうか。

「やめとけ」は、雑な言葉です。 中身が5つくらい混ざっていて、そのうち2つは、このデータでは答えられません。

先に、分けます。


最初に——このデータで答えられないこと

この記事が使うのは、厚生労働省の「job tag」に入っている職業別の調査データです。 実際にその仕事をしている人が、どんな方向に興味を持っているかと、何を大事にしているかが入っています。

逆にいうと、次のことは測っていません。

  • 年収がいくらか
  • 残業がどれくらいか
  • 求人がどれくらいあるか
  • 会社が情シスにいくら投資しているか

この4つは答えられないと、先に書いておきます。


「やめとけ」の中身は、だいたい5つです

#言われていること数値との関係
年収が上がらない答えられない
スキルが伸びない職種による。1職種だけ形が違う
雑用係になる半分合っている
人と話す量が減ると思ったら逆だった合っている。いちばん実害がある
開発から降りることになる違う。降りるのではなく、別の場所を選んでいる

④ 「人と話す量が減ると思ったら逆だった」——合っています

これが、この記事でいちばん重要なところです。

社内SEの「人と関わることへの向き方」は 3.22。 IT・エンジニア全体(3.15)より高い。

「客先常駐がしんどいから社内へ」で移ると、ここで外します。 変わるのは誰と話すかであって、どれだけ話すかではありません。

しかも職種によっては、増えます。

  • 基盤システムのエンジニア 3.48 — IT・エンジニア9職種の中で最も高い
  • ヘルプデスク 3.37
  • 運用・管理 2.82

減らしたいなら、選ぶべきは運用・管理です。 3職種の中で唯一、IT全体より低い位置にあります。

しんどいのが「客先常駐」なのか「人と話すこと」なのか。 ここを分けないまま移ると、同じ疲れ方をします。


② 「スキルが伸びない」——職種によります

満足の中心を見ると、1職種だけ形が違います。

  • 運用・管理 — 専門性が1位(3.47)
  • 基盤システムのエンジニア — 専門性が1位(3.45)
  • ヘルプデスク労働安全衛生が1位(3.20)で、専門性は3位(3.10)

「スキルが伸びない」と言われるとき、指されているのはヘルプデスクであることが多い。

ただし、ここには重要な含みがあります。 ヘルプデスクをしている人自身が、積み上がることを満足の中心に置いていない。 不満なのではなく、求めているものが違うという調査結果です。

だから「やめとけ」が当たるのは、積み上がることが動機の中心にある人だけです。


③ 「雑用係になる」——半分合っています

社内SEの「手を動かして形にすることへの向き方」は 3.47。 IT・エンジニア全体(3.45)とほぼ同じで、17業界の中では高い層です。

運用・管理にいたっては 3.60 で、3職種の最高。

手を動かす量は、実際に多い。 そこは合っています。

ただし「雑用」かどうかは、数値では判定できません。 プリンタの設定も基幹システムの更改も、この数値の上では同じ「手を動かすこと」に入ります。

確かめ方があります。去年いちばん大きかった案件は何でしたか」と聞いてください。出てくるのが障害対応の話だけなら、そこは守る仕事が中心の職場です。


⑤ 「開発から降りることになる」——違います

社内SEとIT・エンジニアの距離は 0.34。 17業界の全組み合わせの中で2番目に近い位置です(1位はIT・エンジニアとメーカー技術職の 0.33 で、差は 0.01)。

この 0.34 は、「別の業界へ移る」という距離ではありません。 17業界の平均どうしの距離としては、ほぼ最短の部類です。

変わるのは1点だけ。 決まった手順を正確に回す向き方が、IT全体より高くなる(3.19 対 2.93)。逆に人を説得し動かす向き方は下がる(3.10 対 3.17)。

つまり、手放すのは「毎回ゼロから決める権利」で、代わりに手に入るのは「決まっているという前提」です。

そこが嫌だったのか、開発そのものが嫌だったのか。 前者なら、これは降格ではなく条件の入れ替えにあたります。


「やめとけ」が当たる人と、当たらない人

当たりやすいのは、こういう人です。

  • 人と話す量を減らしたくて来た人。 相手が変わるだけで、量は減りません
  • 仕様が固まらない状態で走ることに面白さを感じる人。 そこは物足りなくなります
  • 積み上がることが動機の中心で、ヘルプデスクを選んだ人。 満足の形がずれます

当たらないのは、こういう人です。

  • 毎回ゼロからやり方を決めるのに疲れた人
  • 止めないことに価値を置ける人
  • 落ちないこと・続くことを、条件の上位に置いている人

3職種すべてで、安定に関する項目が満足の上位に入っています。 これはIT系ではここだけの形です。


まとめ

  • このデータでは、年収・残業・求人数は答えられない
  • 「人と話す量が減る」は逆。 社内SE 3.22 は IT全体 3.15 より高い
  • 減らしたいなら運用・管理(2.82)。 基盤システム(3.48)はIT9職種で最も高い
  • 「スキルが伸びない」はヘルプデスクの話。 ただし本人が積み上がることを満足の中心に置いていない
  • 「開発から降りる」は違う。 ITとの距離 0.34 は全組み合わせで2番目に近い

決めるべきなのは、「やめとけ」が正しいかどうかではありません。しんどいのが客先常駐なのか、人と話すことなのかです。


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この記事の根拠

数値が高いほど、その方向への興味が強いことを示します。

業界平均(職業興味・RIASEC)

業界現実的研究的芸術的社会的企業的慣習的
社内SE3.473.312.603.223.103.19
IT・エンジニア3.453.422.753.153.172.93
メーカー技術職3.613.542.553.043.083.01

社内SEの職業別

職業現実的研究的芸術的社会的企業的慣習的
システムエンジニア(基盤システム)3.453.352.763.483.413.12
ヘルプデスク(IT)3.373.272.403.372.983.31
運用・管理(IT)3.603.322.632.822.903.15

太字は社内SE3職種の中での最大・最小であって、17業界での順位ではありません。

仕事価値観(上位3項目):運用・管理は専門性3.47/労働安全衛生3.22/良好な対人関係3.07、ヘルプデスクは労働安全衛生3.20/良好な対人関係3.12/専門性3.10、基盤システムは専門性3.45/雇用や生活の安定性3.33/達成感3.24。

業界間の距離:6領域の値をそのままユークリッド距離で算出したものです。社内SEとIT・エンジニアは 0.34、メーカー技術職とIT・エンジニアは 0.33。

このデータに含まれていないもの:年収・残業時間・求人数。本文で「答えられない」と書いた項目は、すべてこれに当たります。

出典:厚生労働省 職業情報提供サイト(日本版O-NET)「job tag」簡易版数値系ダウンロードデータ ver.7.00(最終更新 2026年2月10日/制作・著作:独立行政法人 労働政策研究・研修機構)