「未経験からエンジニアはやめとけ、と書いてある」 「35歳で限界が来ると言われた」 「勉強し続けないと死ぬ、という言葉を何度も見た」
調べるほど不安になって、結局その日は何も決めなかった。 そんな日がある人も多いのではないでしょうか。
「やめとけ」は、雑な言葉です。 中身が4つくらい混ざっていて、そのうちいくつかは本当で、いくつかはこのデータでは答えられません。
この記事では、先に分けます。
最初に——このデータで答えられないこと
この記事が使うのは、厚生労働省の「job tag」に入っている職業別の調査データです。 実際にその仕事をしている人が、どんな方向に興味を持っているかと、何を大事にしているかが入っています。
逆にいうと、次のことは測っていません。
- 年収がいくらか
- 労働時間がどれくらいか
- 何歳まで働けるか
- 求人がどれくらいあるか
「やめとけ」の理由の半分は、この4つに関するものです。 そこはこのデータでは答えられないと、先に書いておきます。
答えられないことを「答えられない」と書かないと、残りの話も信用できなくなるからです。
「やめとけ」の中身は、だいたい4つです
| # | 言われていること | 数値との関係 |
|---|---|---|
| ① | 勉強し続けないといけない | 合っている。ただし読み方が逆 |
| ② | 人と話さなくていいと思ったら違った | 職種による。差は業界内で最大級 |
| ③ | 35歳で限界が来る | このデータでは答えられない |
| ④ | 給料が上がらない/上がる | このデータでは答えられない |
① 「勉強し続けないといけない」——合っています
ただし、読み方が逆です。
job tagには、その仕事をしている人が何を大事にしているかのデータも入っています。**IT・エンジニア系9職種のうち7職種で、1位は「専門性が積み上がること」**でした。
これは「勉強を強いられている」という数字ではありません。 実際にその仕事をしている人が、技術が自分の中に溜まっていく手応えを、満足の中心に置いているという調査結果です。
だから、こう言い換えられます。
- 積み上がることが嬉しい人にとって — これは条件ではなく、報酬のほう
- 積み上がることに関心がない人にとって — これは終わらない宿題になる
「やめとけ」が当たるのは、後者の人です。 そしてそれは、努力が足りないという話ではありません。 満足の中心が別の場所にある、というだけです。
確かめ方があります。 これまでの仕事で、「できるようになった」と感じた瞬間を思い出せるか。 思い出せないなら、そこは動機の中心ではない可能性があります。
② 「人と話さなくていいと思ったら違った」——職種によります
この誤解が、いちばん多く、いちばん実害があります。
IT・エンジニア9職種の「人と関わることへの向き方」は、2.79 から 3.48 まで割れます。
- 基盤システムのエンジニア 3.48 — 9職種で最も高い
- プロジェクトマネージャ 3.43 — ほぼ同水準
- プログラマー 2.90
- スマホアプリ開発 2.79 — 9職種で最も低い
0.69 の差があります。 参考までに、17業界の平均で見た「人と関わること」の幅は 1.24 です。業界をまたぐ差の半分以上が、IT業界の中だけで起きています。
「人と関わりたくないからIT」は、職種まで決めないと成り立ちません。
そして求人の多い職種ほど、対人が多い側に寄ります。 受託開発のSE(3.24)は、要件を聞き、仕様を合意し、進捗を説明する仕事です。
面談で1つ聞けば分かります。 「この職種は、1日のうちどれくらいが打ち合わせですか」。
③ 「35歳で限界が来る」——このデータでは答えられません
job tagは年齢を測っていません。 なので、この記事では本当とも嘘とも書きません。
ただ、1つだけ数値の側から言えることがあります。
プロジェクトマネージャは、9職種の中で「調べて突き止めることへの向き方」が最も低い(2.86)。代わりに人を動かす向き方が高い。
つまり、よく言われる「歳を取ったらマネジメントへ」は、同じ仕事の延長ではありません。 求められる向き方が別のものに変わります。
これは「限界」の話ではなく、「別の仕事に移る」という話です。 そこを一続きだと思っていると、移った先で手応えを失います。
移らないという選択もあります。 データサイエンティスト(3.85)や組込み・IoT(3.68)のように、突き止める向き方が高いまま続く職種は業界の中にあります。
④ 「給料が上がらない/上がる」——このデータでは答えられません
このデータに年収は入っていません。 ここで数値を出すことはできません。
書けることは1つだけです。 9職種のうち7職種で、満足の1位は「専門性」でした。 収入や地位ではありません。
これは「収入が低い」という意味ではありません。 実際にその仕事をしている人が、何を満足の中心に置いているかという話です。
収入が動機の中心にある場合、この業界はそこを直接は満たしません。 満たすのは、積み上がる感覚のほうです。
「やめとけ」が当たる人と、当たらない人
当たりやすいのは、こういう人です。
- できるようになった瞬間に、手応えを感じない人。 積み上がることが報酬にならない
- 人と関わる量を減らしたくて来た人。 職種を決めずに入ると、そこは減りません
- 決められた手順を正確に回したい人。 慣習的(2.93)は17業界の下位で、毎回やり方が変わります
当たらないのは、こういう人です。
- 分からないことがあると、分かるまで手が止まらない人
- 手を動かして確かめないと納得できない人
- 技術が自分の中に溜まっていく感覚を、役職より上に置ける人
「やめとけ」と言っている人が間違っているわけではありません。 その人にとっては本当だった、というだけです。当たるかどうかは、人によって変わります。
まとめ
- このデータでは、年収・労働時間・年齢・求人数は答えられない。 「やめとけ」の理由の半分はそこにある
- 「勉強し続ける」は合っている。 ただし満足の1位が「専門性」=報酬の側に出ている
- 「人と話さなくていい」は職種による。 業界内で 2.79〜3.48 と割れる
- 「35歳で限界」は判定できない。 ただしマネジメントへの移行は、求められる向き方が別物になる
- 「やめとけ」が当たるのは、積み上がることが報酬にならない人
決めるべきなのは、「やめとけ」が正しいかどうかではありません。自分がどの型に近いかです。
関連ページ
- エンジニアに向いてる人——9職種を5つの型に分けました
- エンジニアの転職エージェントの選び方——型が決まったあとの話
- 業界別の向き・不向き一覧——17業界を1枚の表で
この記事の根拠
数値が高いほど、その方向への興味が強いことを示します。
IT・エンジニアの職業別(職業興味・RIASEC)
| 職業 | 現実的 | 研究的 | 芸術的 | 社会的 | 企業的 | 慣習的 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| システムエンジニア(基盤システム) | 3.45 | 3.35 | 2.76 | 3.48 | 3.41 | 3.12 |
| プロジェクトマネージャ(IT) | 3.57 | 2.86 | 2.52 | 3.43 | 3.39 | 2.91 |
| システムエンジニア(組込み、IoT) | 3.74 | 3.68 | 2.86 | 3.36 | 3.14 | 3.05 |
| システムエンジニア(受託開発) | 3.29 | 3.15 | 2.71 | 3.24 | 3.19 | 2.98 |
| システムエンジニア(Webサービス開発) | 3.24 | 3.24 | 2.82 | 3.13 | 3.10 | 3.00 |
| データサイエンティスト | 3.36 | 3.85 | 2.72 | 3.03 | 3.21 | 2.72 |
| ソフトウェア開発(パッケージソフト) | 3.31 | 3.49 | 2.64 | 3.00 | 3.15 | 2.85 |
| プログラマー | 3.75 | 3.76 | 2.73 | 2.90 | 2.88 | 3.12 |
| ソフトウェア開発(スマホアプリ) | 3.32 | 3.40 | 2.97 | 2.79 | 3.03 | 2.61 |
太字はIT・エンジニア9職種の中での最大・最小であって、17業界での順位ではありません。
業界平均との比較:IT・エンジニアの慣習的は 2.93 で、17業界ではコンサル(2.69)に次いで2番目に低い層です。
仕事価値観:9職種のうち7職種で1位が「専門性」。PMのみ達成感(3.75)が1位。
このデータに含まれていないもの:年収・労働時間・年齢構成・求人数。本文で「答えられない」と書いた項目は、すべてこれに当たります。
出典:厚生労働省 職業情報提供サイト(日本版O-NET)「job tag」簡易版数値系ダウンロードデータ ver.7.00(最終更新 2026年2月10日/制作・著作:独立行政法人 労働政策研究・研修機構)
