コンサルは「やめとけ」と言われる——どこまで本当か

「激務で潰れる、と何度も書いてある」 「専門性がつかない、という言葉が引っかかっている」 「入ったら事業会社に戻れなくなるのではないか」

年収の話と激務の話ばかりで、自分に当てはまるのか判断できなかった。 そんな経験がある人も多いのではないでしょうか。

「やめとけ」は、雑な言葉です。 中身が5つくらい混ざっていて、そのうち2つは、このデータでは答えられません。

先に、分けます。


最初に——このデータで答えられないこと

この記事が使うのは、厚生労働省の「job tag」に入っている職業別の調査データです。 実際にその仕事をしている人が、どんな方向に興味を持っているかと、何を大事にしているかが入っています。

逆にいうと、次のことは測っていません。

  • 労働時間がどれくらいか
  • 年収がいくらか
  • 何年で辞める人が多いか
  • 書類が通るかどうか

「コンサルはやめとけ」の理由で最も多いのは、この4つです。 そこは答えられないと、先に書いておきます。


「やめとけ」の中身は、だいたい5つです

#言われていること数値との関係
激務で潰れる答えられない
頭が良くないと無理違う。4職種で大きく割れる
手に職がつかない合っている
事業会社に戻れなくなる半分合っている。理由は年収ではない
どのコンサルも同じ違う

② 「頭が良くないと無理」——違います

調べて突き止めることへの向き方は、4職種で 0.89 割れます。

  • ITコンサルタント 3.55
  • 経営コンサルタント 3.51
  • M&Aアドバイザー 3.04
  • 人事コンサルタント 2.66

人事コンサルタントは、手を動かす向き方も4職種で最も低い。 分析でも実装でもない位置にいます。それでいて満足の1位は「自律性」(3.88)

「分析力がコンサルの本体」という前提が、この1職種で崩れます。

参考までに、17業界の平均で見たこの領域の幅は 0.93 です。 業界をまたぐ差とほぼ同じ幅が、コンサルの中にあります。


③ 「手に職がつかない」——合っています

あまり語られませんが、数値と合っています。

コンサルの「手を動かして形にすることへの向き方」は 2.89。 17業界の中で、士業(2.60)に次いで下から2番目です。

成果物が資料と意思決定になります。 モノとしては何も残りません。

手を動かして形が残ることに満足を感じる人にとって、これは構造的な不足です。 年数を重ねても埋まりません。

ただし「専門性が積み上がらない」という意味ではありません。 満足の上位3には、4職種すべてで「専門性」が入っています。積み上がるものはあるが、それは手に取れる形ではない、ということです。


④ 「事業会社に戻れなくなる」——半分合っています

ただし、理由は年収ではありません。

コンサルの「決まった手順を正確に回すことへの向き方」は 2.69 で、17業界の中で最も低い。

戻る先の多くは、ここが高い組織です。

  • 管理部門(課長級) 3.58
  • 士業 3.50
  • 管理部門(担当) 3.36
  • 営業 3.20

管理部門の課長級とは 0.89 離れます。

「枠が無いところで決める」ことに慣れた人が、「枠を守らせる」側に移ると、そこが摩擦になります。 能力の問題ではなく、向き方の問題です。

逆にいうと、戻り先の選び方で変わります。 決まった手順を回す向き方が低い側(マーケティングやIT・エンジニア)なら、落差は小さくなります。


⑤ 「どのコンサルも同じ」——違います

人を説得し動かす向き方も、経営コンサルタントと人事コンサルタントで 0.64 割れます。

満足の中心も、1職種だけ違います。 経営・IT・人事は「自律性」が上位3に入りますが、M&Aアドバイザーだけは入りません——こちらは専門性・達成感・自己成長の並びです。

M&Aは、案件が成立したかどうかで区切りがつく仕事です。 終わりが見えない状態が苦手なら、ここが選択肢になります。


「やめとけ」が当たる人と、当たらない人

当たりやすいのは、こういう人です。

  • 決まった型があるほうが力を出せる人。 慣習的 2.69 は17業界の最低で、これは職種を変えても埋まりません
  • 手を動かして形が残らないと落ち着かない人。 現実的 2.89 は下から2番目
  • 正しい答えを出したら終わり、と考える人。 相手が動くところまでが範囲です

当たらないのは、こういう人です。

  • やり方が決まっていないほうが動きやすい人
  • 進め方を自分の裁量で決めたい人
  • 相手が実際に動いたかどうかが、気になって仕方ない人

「やめとけ」と言っている人が間違っているわけではありません。 その人にとっては本当だった、というだけです。


まとめ

  • このデータでは、労働時間・年収・離職率・書類通過は答えられない
  • 「頭が良くないと無理」は違う。 4職種で調べる向き方が 0.89 割れる
  • 「手に職がつかない」は合っている。 手を動かす向き方 2.89 は17業界で下から2番目
  • 「事業会社に戻れない」は半分合っている。 慣習的 2.69 が17業界の最低で、枠の強い組織との落差が大きい
  • 戻り先の選び方で変わる。 慣習的が低い側なら落差は小さい

決めるべきなのは、「やめとけ」が正しいかどうかではありません。枠が無い状態で決められるかです。


関連ページ


この記事の根拠

数値が高いほど、その方向への興味が強いことを示します。

業界平均(職業興味・RIASEC)

業界現実的研究的芸術的社会的企業的慣習的
コンサル2.893.192.653.493.632.69
士業2.603.262.263.863.493.50
管理部門(課長級)3.253.122.323.733.783.58
管理部門(担当)3.092.982.473.133.223.36
営業3.022.972.583.843.573.20
マーケティング3.073.433.223.443.593.09
IT・エンジニア3.453.422.753.153.172.93

コンサルの職業別

職業現実的研究的芸術的社会的企業的慣習的
ITコンサルタント3.223.552.713.553.732.88
経営コンサルタント2.983.512.743.723.892.72
M&Aアドバイザー2.883.042.713.333.672.46
人事コンサルタント2.472.662.453.343.252.68

仕事価値観(上位3項目):経営は専門性4.12/達成感4.06/自律性4.00、ITは自己成長3.93/専門性3.89/自律性3.86、人事は自律性3.88/専門性3.77/自己成長3.73、M&Aは専門性3.42/達成感3.39/自己成長3.36。自律性が上位3に入るのは4職種中3職種で、M&Aだけ入りません。

このデータに含まれていないもの:労働時間・年収・離職率・選考通過率。本文で「答えられない」と書いた項目は、すべてこれに当たります。

出典:厚生労働省 職業情報提供サイト(日本版O-NET)「job tag」簡易版数値系ダウンロードデータ ver.7.00(最終更新 2026年2月10日/制作・著作:独立行政法人 労働政策研究・研修機構)