Webデザイナーの「やめとけ」——デザイナー12職業に並べると、センスの話がいちばん外れます

このページには、書き手の一次体験がありません。公的データだけで書いています。数値は厚生労働省 job tag の調査で、その職業に就いている人が自分の仕事をどう捉えているかを答えたものです(1職業あたり20名以上・標準誤差0.51以下が目標)。年収・労働時間・求人数は測っていません。このサイトのデータについて

この記事の内容(8項目)

「生成AIが出てきたから、もう終わりだと言われた」 「実態はコーディングと修正対応で、デザインなんてしていない」 「センスが無いと続かない、とも書いてある」

どれも同じ職業の話に見えて、指している場所が違う。

言われ方は、5つに分かれます。


6領域——クリエイティブの12職業の中では、決まった手順を正確に回すが2位

手を動かす
3.567位(同率2)
調べて突き止める
3.416位
表現する
3.6511位
人と関わる
3.209位
人を動かす
3.268位
決まった手順を正確に回す
3.202位

順位はクリエイティブに収録された12職業の中での順位です。37業界の業界平均の順位ではありません。0.01以内の差は同率として数えています。

満足の置きどころ——11項目のうち、専門性が1位

1位
専門性 3.58
2位
私生活 3.54
3位
労働安全 3.49
3位(同率)
達成感 3.49

11項目は、その職業に就いている人が何を大事にしているかです。何に満足しているかを測ったものではありません。給与・雇用・労働時間・安全そのものの数値でもありません。0.01以内の差は同率として数えています。

「Webデザイナーはやめとけ」の中身——「センスが無いと続かない」だけ、位置が反対です

#言われていること判定
生成AIに置き換えられる答えられない
センスが無いと続かない同じ業界の12職業の中では逆に出ます
実際はコーディングと修正対応で終わる向き方なら言える
続けても専門性が残らない向き方なら言える
イラストレーターに移ったほうがいい違う

比べている相手は、クリエイティブに分類した12の職業です。Webデザイナー・グラフィックデザイナー・広告デザイナー・インテリアデザイナー・ファッションデザイナー・インダストリアルデザイナー・イラストレーター・コピーライター・テクニカルライター・雑誌編集者・映像編集者・商業カメラマンを、同じ物差しで横に並べています。

① 生成AIに置き換えられる——この先のことは、データの外です

技術がどう変わるかも、仕事の量がどうなるかも、案件の相場も、このデータには入っていません。「置き換えられるか」にも「安く買い叩かれるか」にも答えられません。 否定でも肯定でもなく、材料が無いという意味です。

いま残っている人が何を重く見ているかなら分かります。積み上がる側への重みは、クリエイティブの11職業の中で軽いほうでした。満足の置きどころだけは、値のそろわない職業を外した11職業で数えています。

ただし、これは実際に何かが積み上がらないという意味でも、置き換えられないという意味でもありません。読み取れるのは、そこまでです。

置き換えの見通しを先に固めたい人にとって、この項目は答えになりません。

② 「センスが無いと続かない」——表現する向き方は、12職業で下から2番目です

下にいるのはテクニカルライターだけです。すぐ上の広告デザイナーとは、ほとんど並びます。

ただし「センスがあるか」を測った数値ではありません。独自の形を作る方向に関心が向いているかどうかだけです。

代わりに高いのは、逆の側です。決まった手順を正確に回す向き方が、12職業の中で上から2番目に来ます(いちばん上のテクニカルライターとは、ほとんど並びます)。手を動かして形にする向き方は、12職業の真ん中あたりです。

発想そのもので勝負する職業像を12職業に当てはめると、当てはまりにくいほうにこの職業が来ます。 決められた枠を崩さずに整えることに手応えがある人は、この向き方と近いところにいます。

白紙から自分の表現を出すことが目的なら、同じ12職業の中に、表現する向き方がもっと高い職業がいくつもあります。

③ 「コーディングと修正対応で終わる」——決める範囲への重みは、11職業の下端です

自分で決められることを大事にしている度合いは、クリエイティブの11職業の中で最も低く出ています。達成感のほうも下端で、Webデザイナーがいちばん下、その次が広告デザイナーです。

作り切った手応えと、決める範囲の広さ——この2つに置く重みが、11職業の中でいちばん軽いほうに来ます。

ただし、これは「実際に裁量が無い」という証拠ではありません。決められる範囲がどれだけあるかは、このデータでは測っていません。

決める範囲の広さを求めて入ると、この職業に残っている人の重心とはずれます。逆に、決まった要件の中で仕上げることが苦にならない人にとっては、この位置は向かい風になりません。

④ 続けても専門性が残らない——「残るか」には答えられません

何が身につくかも、次にどこへ移れるかも、このデータには入っていません。求人も資格も選考も同じです。「潰しが効くか」には答えられません。

答えられるのは、重みの置き方だけです。専門性を大事にしている度合いも、自己成長を大事にしている度合いも、11職業の中で下から2番目に出ています。どちらも、いちばん下にいるのは広告デザイナーです。

積み上がることを軸のいちばん上に置いて職場を選んできた人から見ると、この職業に残っている人の重心は、そこから少し外れた場所にあります。

ただし、重みが軽いことと、実際に積み上がらないことは別です。 前者はこのデータが答え、後者は答えません。

⑤ 「イラストレーターに移ったほうがいい」——上がるのは作る側、下りるのは条件の側です

イラストレーターは、作る仕事の中で移り先として名前の挙がりやすい相手です。満足の置きどころを11項目並べると、8つはイラストレーターのほうが高く出ています。達成感も、自分で決められることも、専門性も、自己成長もそちら側です。

Webデザイナーが上回るのは3つ——雇用や生活の安定性、報酬、労働安全衛生。このうち労働安全衛生は、ほとんど並びます。

報酬・雇用や生活の安定性・私生活との両立は、いずれも「どれだけ大事にしているか」の値です。実際の金額も、休みの取りやすさも、このデータは測っていません。

6つの領域のほうは、上下ではなく入れ替わりです。表現する向き方と、調べて突き止める向き方はイラストレーターが上。決まった手順を正確に回す向き方と、人を説得し動かす向き方はWebデザイナーが上に来ます。

クリエイティブに分類した12職業の中では、作品の側より条件の側を下ろしていないほうに、この職業が位置します。 作るものの中身で満足を取り切りたい人には噛み合う移り方になり、生活の側を条件に入れたまま作る仕事を続けたい人には、手放すものが出ます。


まとめ

  • 「生成AIに置き換えられる」には答えられない。 技術も仕事量も案件の相場も、このデータの外側。言えるのは、いまこの仕事に残っている人が何を重く見ているかだけ
  • 「センスが無いと続かない」は、12職業に並べると反対側に出る。 表現する向き方は下から2番目、決まった手順を正確に回す向き方は上から2番目
  • 「コーディングと修正対応で終わる」は、向き方なら言える。 自分で決められることへの重みは11職業で最も低い。ただし実際の裁量の広さは測っていない
  • 「専門性が残らない」で答えられるのは、重みの置き方だけ。 専門性も自己成長も11職業で下から2番目。何が身につくかは、このデータの外
  • 「イラストレーターに移ったほうがいい」は違う。 満足の置きどころは8対3に割れ、Webデザイナーが上に来るのは雇用や生活の安定性・報酬・労働安全衛生。移った先で下りるのは、条件の側

表現を取りに来たのか、条件を保ったまま作る側にいたいのか。この職業が下ろしていないのは、条件のほうでした。

どちらを取りに行くのかを面談でどう伝えるかは、クリエイティブの転職エージェントの選び方に書いています。


この記事の根拠

数値の内訳をひらく

本文では数値を出さず、順位と上位・下位の言葉だけで書いています。元になった値をここに置きます。

比べた集合:クリエイティブに分類した12職業です(job tag の表記では「Webデザイナー(Web制作会社)」)。満足の置きどころだけは11職業——テクニカルライターは、この11項目に値がありません。本文の「最も」「上から2番目」「下から2番目」は、すべてこの集合の中での順位で、他の業界や job tag 全体の中での順位ではありません。

職業興味(6領域・Webデザイナーの値と、12職業の中での位置)

  • 表現する(芸術的)3.65 — 下から2番目(最も低いのはテクニカルライター 3.56、すぐ上の広告デザイナー 3.67 とはほとんど並びます。最も高いのはイラストレーター 4.42)
  • 決まった手順を正確に回す(慣習的)3.20 — 上から2番目(最も高いのはテクニカルライター 3.22 で、ほとんど並びます。最も低いのはインダストリアルデザイナー 2.42)
  • 手を動かして形にする(現実的)3.56 — 上から7番目(グラフィックデザイナー 3.56 と同値。最も高いのはインダストリアルデザイナー 4.42、最も低いのは広告デザイナー 3.11)
  • 調べて突き止める(研究的)3.41 — 上から6番目(最も高いのはインダストリアルデザイナー 4.21、最も低いのは広告デザイナー 3.00)
  • 人と関わる(社会的)3.20 — 上から9番目(最も高いのは雑誌編集者 3.86、最も低いのはファッションデザイナー 3.10)
  • 人を説得し、動かす(企業的)3.26 — 上から8番目(最も高いのは雑誌編集者 3.68、最も低いのはイラストレーター 2.98)

満足の置きどころ(11項目・Webデザイナーの値と、11職業の中での位置)

  • 達成感 3.49(最も低い。次に低いのは広告デザイナー 3.54、最も高いのはインダストリアルデザイナー 4.46)
  • 自律性 3.23(最も低い。次に低いのは広告デザイナー 3.31、最も高いのはインダストリアルデザイナー 4.00)
  • 専門性 3.58(下から2番目。最も低いのは広告デザイナー 3.52、最も高いのはインテリアデザイナー 4.29)
  • 自己成長 3.42(下から2番目。最も低いのは広告デザイナー 3.31、最も高いのはインテリアデザイナー 4.10)
  • 対人関係 3.09(下から2番目。最も低いのはグラフィックデザイナー 3.04)
  • 社会的認知 2.75(下から2番目。グラフィックデザイナー 2.75 と同値。最も低いのは映像編集者 2.54)
  • 奉仕・貢献 2.75(上から7番目。最も高いのはインテリアデザイナー 3.29、最も低いのはグラフィックデザイナー 2.59)
  • 私生活との両立 3.54(上から3番目。上はインダストリアルデザイナー 3.73 とイラストレーター 3.60)
  • 労働安全衛生 3.49(上から4番目。最も高いのはファッションデザイナー 3.67)
  • 報酬 2.81(上から4番目。最も高いのはインダストリアルデザイナー 3.39)
  • 雇用や生活の安定性 2.86(上から3番目。上はインダストリアルデザイナー 3.27 とインテリアデザイナー 3.07。次に来る雑誌編集者 2.84 とはほとんど並びます)

⑤で使ったイラストレーターの値:現実的 3.59 / 研究的 3.73 / 芸術的 4.42 / 社会的 3.14 / 企業的 2.98 / 慣習的 2.69。満足の置きどころは 専門性 4.23 / 達成感 4.07 / 自己成長 4.07 / 自律性 3.98 / 私生活との両立 3.60 / 労働安全衛生 3.45 / 対人関係 3.18 / 社会的認知 3.10 / 奉仕・貢献 2.90 / 報酬 2.53 / 雇用や生活の安定性 2.13。

⑤の満足の置きどころ11項目の内訳(Webデザイナー/イラストレーター):イラストレーターのほうが高い8項目=専門性 3.58/4.23、達成感 3.49/4.07、自己成長 3.42/4.07、自律性 3.23/3.98、私生活との両立 3.54/3.60、対人関係 3.09/3.18、社会的認知 2.75/3.10、奉仕・貢献 2.75/2.90。Webデザイナーのほうが高い3項目=労働安全衛生 3.49/3.45、雇用や生活の安定性 2.86/2.13、報酬 2.81/2.53。内訳は 8対3 です。6領域は、芸術的(3.65/4.42)と研究的(3.41/3.73)がイラストレーター、慣習的(3.20/2.69)と企業的(3.26/2.98)がWebデザイナー。現実的(3.56/3.59)はほとんど並び、社会的(3.20/3.14)は 0.06 の差です。

順位の数え方0.01以内の差は同率として数え、それより大きい差だけを順位として読んでいます。 本文で「ほとんど並ぶ」と書いたのは、順位はついても差が 0.05 未満のところです(芸術的の 3.65 と 3.67、慣習的の 3.20 と 3.22、雇用や生活の安定性の 2.86 と 2.84、⑤の労働安全衛生の 3.49 と 3.45)。達成感の 3.49 と 3.54 は 0.05 の差があるため、本文では「いちばん下、その次が広告デザイナー」と2職業を並べて書いています。

このデータに含まれていないもの:報酬の額・案件の相場・稼働時間・納期・求人の数・選考の通過率・生成AIによる影響・企業ごとの違い・実際の裁量の広さ。「報酬」「雇用や生活の安定性」「私生活との両立」は、いずれも「どれだけ大事にしているか」の値で、実際の金額や勤務の実態ではありません。能力・スキルも測っていないので、「務まるかどうか」もこのデータでは答えられません。

出典:厚生労働省 職業情報提供サイト(日本版O-NET)「job tag」簡易版数値系ダウンロードデータ ver.7.00(最終更新 2026年3月17日/制作・著作:独立行政法人 労働政策研究・研修機構)