刑務官の「やめとけ」には、違う話が混ざっています——安定を大事にしている度合いは、自分の中では1位、8職業では最下位

ここに出しているのは、いまこの仕事をしている人が、自分の仕事をどう捉えているかを答えた調査の数値です(厚生労働省 job tag。1職業あたり20名以上に聞いています)。年収・労働時間・求人数は測っていません。このページは公的データだけで書いていて、書き手の一次体験は入っていません。このサイトのデータについて

この記事の内容(8項目)

「精神的に削られる」と書いてある。 「閉じた世界で、外の感覚が通じなくなる」という話も出てくる。 体力と気迫が無いと務まらない——そう締めくくられることが多い。

中で何が起きているのかは、どこにも書いていない。刑務官に不利な数字も、隠さずに置きます。

言われている中身は、5つに分かれます。


興味の向き——警察・消防・自衛隊の8職業の中では、決まった手順を正確に回すが4位

手を動かす
8位
調べて突き止める
8位
表現する
7位
人と関わる
7位
人を動かす
8位
決まった手順を正確に回す
4位

これは同じ業界の職業の中での順位で、37業界を通した順位ではありません。ごくわずかな差は同率として数えています。

満足の置きどころ——いちばん高いのは雇用安定

1位
雇用安定
2位
報酬
3位
私生活

これは、その職業に就いている人が何を大事にしているかです。何に満足しているかを測ったものではありません。給与・雇用・労働時間・安全そのものの数値でもありません。ごくわずかな差は同率として数えています。

「刑務官はやめとけ」の中身——並べて反対を向くのは、3つ目です

力で場を作る形を思い描いてこの職業を見ている人は、向き方の並びと噛み合いません。達成感や積み上がる感触を条件の先頭に置いている人も、この位置とはずれます。心身の安全を条件の第一に置きたい人にとって、この並びは追い風になりません。逆に、決まった手つきを崩さずに回し続けることが自分の側にある人は、近いところにいます。

#言われていることこのデータで見えること
精神的に削られる求人票で確かめる
体力と気迫が無いと務まらない働いている人に聞く
人と向き合い続けるのがきつい同じ業界の8職業の中では逆に出ます
安定だけが取り柄だ向き方なら言える
警察官と、同じ向き方の職業だ比べると逆でした

比べている相手は、警察・消防・自衛隊に分類した8つの職業です。刑務官・警察官(都道府県警察)・海上保安官・麻薬取締官・陸上自衛官・海上自衛官・航空自衛官・消防官です。

① 精神的に削られる——勤務の形は、求人票で確かめる

夜勤も、勤務の形も、求人票に書いてあります。向き合う相手との距離は、働いている人に聞くと形が見えます。

置きどころの側からなら、1つだけ言えます。労働安全衛生をどれだけ大事にしているかは、警察・消防・自衛隊に分類した8職業の中で下から2番目です。

これは職場が安全か危険かではなく、大事にしている度合いの話です。

心身の安全を条件の第一に置きたい人にとって、この並びは向かい風の側です。

② 「体力と気迫」——体力は、働いている人に聞く

体力そのものは、働いている人に聞くと形が見えます。

ここで見えるのは、向き方の位置です。手を動かして形にする向き方は、8職業の中で刑務官が最も低く出ています。下から2番目の警察官とも離れています。

人を説得し、動かす向き方も、8職業の中でいちばん下です(海上保安官とはほとんど並びます)。調べて突き止める向き方も、同じく最も低くなります。

力で場を作る形を思い描いてこの職業を見ていると、この3つの並びとはずれます。

③ 人と向き合い続ける——人に向かう比重は、8職業の中で下から2番目です

消防官とはほとんど並び、上には6つの職業が並びます。

良好な対人関係をどれだけ大事にしているかは、この8職業の中で最も低く出ています。

「人と向き合い続ける職業だ」——8職業の並びは、その反対を指しています。

ここも、職場の人間関係が良いとも悪いとも読めません。

ただし、この職業自身の6つの向き方を並べ直すと、人と関わる向き方は上から2番目に来ます。8職業の中では下側なのに、自分の中では上側。外から見た位置と、中での位置が食い違う箇所です。

④ 安定だけが取り柄だ——ここも、二段になっています

この職業の満足の置きどころを高い順に並べると、いちばん上に来るのは雇用や生活の安定性です。2番目とは大きく離れています。「安定が上に来る」は、そのとおりです。

ところが、同じ項目を8職業で横に並べると、刑務官はいちばん下に来ます。

自分の中では突出して1位、8職業の中では最下位。 この業界は8職業とも安定を上に置く帯にあり、その中では低いほうだ、という意味です。

雇用や生活の安定性は、「どれだけ大事にしているか」の値です。実際に雇用が安定しているかどうかも、生活がどうなるかも、このデータは測っていません。

そしてもう1つ。この中でいちばん下に来るのは達成感で、ここも8職業の中で最も低い値です。「安定だけが上に来ている」——数値に近いのは、この言い方になります。

達成感や積み上がる感触を条件の先頭に置いている人は、この並びとずれます。

⑤ 「警察官と同じ向き方」——自分の中でいちばん高く出る向き方が、違います

制服の枠でひとまとめにされることの多い2つですが、形が違います。

  • 警察官の6つの向き方を高い順に並べると、いちばん上に来るのは人と関わる向き方です
  • 刑務官の6つの向き方を高い順に並べると、いちばん上は決まった手順を正確に回す向き方で、人と関わる向き方がそのすぐ下に続きます
  • 2つの差がいちばん小さいのは、決まった手順を正確に回す向き方。いちばん大きいのは、人と関わる向き方です

6つの向き方の値そのものは、6つとも警察官のほうが高く出ています。 満足の置きどころも、11のうち10で警察官のほうが高く、残る1つ——私生活との両立だけが、同じ値で並びます。

ただし、高い低いは向き方の強さであって、仕事の価値でも格でもありません。

読み取れるのは、同じ制服の枠に見えて、自分の中で先頭に来る向き方が別だということです。人に向かうことが先頭に来る側と、決まった形を回すことが先頭に来る側。先頭に来る向き方が、入れ替わっています。


まとめ

  • 「精神的に削られる」の勤務の形は、求人票で確かめる。 ここで見えるのは、労働安全衛生を大事にしている度合いが8職業で下から2番目、というところです
  • 「体力と気迫が無いと務まらない」の体力は、働いている人に聞く。 ここで見えるのは、手を動かして形にする向き方も、人を説得し動かす向き方も、調べて突き止める向き方も、8職業の中で最も低いことです
  • 「人と向き合い続けるのがきつい」は、8職業を並べると逆を向く。 人と関わる向き方は8職業で下から2番目。ただしこの職業自身の6つの向き方の中では上から2番目に来る
  • 「安定だけが取り柄」は、向き方なら言える。ただし二段。 雇用や生活の安定性はこの職業の満足の置きどころで突出して1位、8職業の中では最下位。その中でいちばん下に来るのは達成感
  • 「警察官と同じ向き方」は、比べると逆でした。 自分の中で先頭に来る向き方が別で、警察官は人と関わる向き方、刑務官は決まった手順を正確に回す向き方

決めるべきなのは、刑務官に体力と気迫があるかどうかではありません。決まった形を回すことが、自分の先頭に来るかどうかです。

それを面談でどう言葉にするかは、警察・消防・自衛隊の転職エージェントの選び方へ。


この記事の根拠

数値の内訳をひらく

元になった値をここに置きます。

比べている相手:警察・消防・自衛隊に分類した8職業(警察官(都道府県警察)・海上保安官・麻薬取締官・刑務官・陸上自衛官・海上自衛官・航空自衛官・消防官)。本文の「最も」「下から2番目」「上から2番目」は、すべてこの8職業の中での順位です。他の業界や、job tag 全体の中での順位ではありません。

職業興味(6領域)

  • 手を動かして形にする(現実的):航空自衛官 3.80 / 海上自衛官 3.67 / 麻薬取締官 3.63 / 海上保安官 3.60 / 消防官 3.55 / 陸上自衛官 3.30 / 警察官 3.16 / 刑務官 2.72
  • 調べて突き止める(研究的):麻薬取締官 3.75 / 航空自衛官 3.28 / 消防官 3.24 / 警察官 3.05 / 海上自衛官 2.91 / 陸上自衛官 2.87 / 海上保安官 2.77 / 刑務官 2.41
  • 表現する(芸術的):航空自衛官 2.52 / 消防官 2.39 / 警察官 2.38 / 海上自衛官 2.35 / 陸上自衛官 2.20 / 海上保安官 2.02 / 刑務官 1.93 / 麻薬取締官 1.70
  • 人と関わる(社会的):麻薬取締官 4.46 / 警察官 4.27 / 航空自衛官 3.72 / 海上自衛官 3.67 / 陸上自衛官 3.53 / 海上保安官 3.49 / 刑務官 3.43 / 消防官 3.40
  • 人を説得し、動かす(企業的):麻薬取締官 3.79 / 警察官 3.27 / 航空自衛官 3.22 / 陸上自衛官 3.13 / 海上自衛官 3.05 / 消防官 2.94 / 海上保安官 2.81 / 刑務官 2.79
  • 決まった手順を正確に回す(慣習的):航空自衛官 3.68 / 海上自衛官 3.65 / 警察官 3.61 / 刑務官 3.48 / 麻薬取締官 3.46 / 海上保安官 3.38 / 陸上自衛官 3.29 / 消防官 3.24

刑務官の6領域を、高い順に並べたもの:慣習的 3.48 / 社会的 3.43 / 企業的 2.79 / 現実的 2.72 / 研究的 2.41 / 芸術的 1.93。1位と2位の差は 0.05 で、順位としては読めますが小さい差です。

警察官の6領域を、高い順に並べたもの:社会的 4.27 / 慣習的 3.61 / 企業的 3.27 / 現実的 3.16 / 研究的 3.05 / 芸術的 2.38。

満足の置きどころ(仕事価値観のうち4項目)

  • 達成感:麻薬取締官 3.96 / 消防官 3.84 / 海上保安官 3.68 / 海上自衛官 3.60 / 陸上自衛官 3.58 / 警察官 3.41 / 航空自衛官 3.16 / 刑務官 1.85
  • 良好な対人関係:陸上自衛官 3.58 / 海上自衛官 3.52 / 消防官 3.48 / 海上保安官 3.41 / 航空自衛官 3.29 / 麻薬取締官 3.04 / 警察官 3.03 / 刑務官 2.60
  • 労働安全衛生:陸上自衛官 3.33 / 海上自衛官 3.23 / 航空自衛官 3.13 / 消防官 2.88 / 海上保安官 2.77 / 警察官 2.76 / 刑務官 2.60 / 麻薬取締官 1.92
  • 雇用や生活の安定性:麻薬取締官 4.38 / 海上保安官 4.18 / 陸上自衛官 4.17 / 消防官 4.10 / 海上自衛官 4.08 / 航空自衛官 4.07 / 警察官 4.00 / 刑務官 3.75

刑務官の11項目を、高い順に並べたもの:雇用や生活の安定性 3.75 / 報酬 2.90 / 私生活との両立 2.68 / 奉仕・社会貢献 2.65 / 良好な対人関係 2.60 / 労働安全衛生 2.60 / 専門性 2.58 / 自己成長 2.42 / 自律性 2.35 / 社会的認知 2.17 / 達成感 1.85。1位と2位の差は 0.85 です。

⑤の内訳(警察官 − 刑務官、6領域):慣習的 +0.13 / 現実的 +0.44 / 芸術的 +0.45 / 企業的 +0.48 / 研究的 +0.64 / 社会的 +0.84。最も小さいのは慣習的の 0.13、最も大きいのは社会的の 0.84 です。満足の置きどころは、11項目のうち10項目で警察官のほうが高く、私生活との両立だけが 2.68 で同値でした。

値の高さは、その領域への向き方の強さです。 このデータは、いまその職業に就いている人が「自分の職業ではどうか」に答えたものの平均です。値が低いことは、仕事の価値が低いことではありません。

順位の数え方0.01以内の差は同率として数え、それより大きい差だけを順位として読んでいます。 差が 0.05 未満なのは、社会的の 3.43 と 3.40、企業的の 2.81 と 2.79 です。

このデータに含まれていないもの:年収・給与の決まり方・労働時間・夜勤や当直の量・休日・配属や異動・求人の数・離職率・採用試験の難易度・年齢構成・施設ごとの違い。「雇用や生活の安定性」「労働安全衛生」「良好な対人関係」「達成感」は、いずれも「どれだけ大事にしているか」の値で、実際の雇用の安定度も、職場の安全性も、人間関係の良し悪しも、満足しているかどうかも測ってはいません。能力・スキルも入っていないので、体力も、「務まるかどうか」も、このデータでは答えられません。

出典:厚生労働省 職業情報提供サイト(日本版O-NET)「job tag」簡易版数値系ダウンロードデータ ver.7.00(最終更新 2026年3月17日/制作・著作:独立行政法人 労働政策研究・研修機構)