ITコンサルタントを、コンサル4職業の中に置いてみる——「やめとけ」の5つは、同じ話ではありません

このページには、書き手の一次体験がありません。公的データだけで書いています。数値は厚生労働省 job tag の調査で、その職業に就いている人が自分の仕事をどう捉えているかを答えたものです(1職業あたり20名以上・標準誤差0.51以下が目標)。年収・労働時間・求人数は測っていません。このサイトのデータについて

この記事の内容(8項目)

「炎上案件で潰れた」という話ばかり出てくる。 「手を動かさないから、技術が残らない」とも書いてある。 経営コンサルタントの下位互換だ、という言い方もある。

読んでも、自分に当てはまるのかが分からない。

言われている中身は、5つに分かれます。


6領域——コンサルの4職業の中では、手を動かすが1位

手を動かす
3.221位
調べて突き止める
3.551位
表現する
2.712位(同率2)
人と関わる
3.552位
人を動かす
3.732位
決まった手順を正確に回す
2.881位

順位はコンサルに収録された4職業の中での順位です。37業界の業界平均の順位ではありません。0.01以内の差は同率として数えています。

満足の置きどころ——11項目のうち、自己成長が1位

1位
自己成長 3.93
2位
専門性 3.89
3位
自律性 3.86

11項目は、その職業に就いている人が何を大事にしているかです。何に満足しているかを測ったものではありません。給与・雇用・労働時間・安全そのものの数値でもありません。0.01以内の差は同率として数えています。

「ITコンサルタントはやめとけ」は5つの別の話——「経営コンサルタントの下位互換」だけは、並べると成り立ちません

#言われていることデータとの関係
炎上案件に当たると潰れる答えられない
手を動かさない仕事だ4職業の中では、逆に出ます
調整ばかりで、人と話すのが苦手だと務まらない向き方なら言える
潰しが効かない向き方なら言える
経営コンサルタントの下位互換だ違う

比べている相手は、コンサルに分類した4つの職業です。ITコンサルタント・経営コンサルタント・人事コンサルタント・M&Aアドバイザーの4つを、同じ物差しで横に並べています。

① 炎上案件に当たると潰れる——忙しさは、このデータの外にあります

労働時間も、残業も、繁忙の波も、このデータには入っていません。だから「本当に潰れるか」には答えられません。 ここで「答えられない」と書いているのは、否定ではなく、材料が無いという意味です。

そのうえで、満足の置きどころの側からなら1つだけ言えることがあります。私生活との両立をどれだけ大事にしているかは、人事コンサルタントとほぼ並んで、4職業の上側にあります。経営コンサルタントやM&Aアドバイザーより上です。

これは「両立できている」という意味ではありません。大事にしている度合いの話です。もし言われているとおりの忙しさが本当なら、それを重く見ている人が多い職業だ、というところまでが読み取れる範囲になります。

生活の側を一時的になら動かせる人にとって、この項目は決め手になりにくい位置にあります。逆に、生活の側を動かさない前提で考えたい人にとっては、ここが最初の確認事項になります。そしてその確認は、このデータではできません。

② 「手を動かさない仕事だ」——4職業の中では、いちばん手を動かす側に出ています

手を動かして形にする向き方は、コンサルに分類した4職業の中で、ITコンサルタントが最も高く出ています。経営コンサルタントより上、人事コンサルタントとは大きく離れています。決まった手順を正確に回す向き方も、この4職業の中では最も高い側です。

資料と会議だけで完結する職業像を4職業に当てはめると、いちばん当てはまらないのがこの職業になります。だからこの言われ方は、4職業を並べると逆を向きます。

ただし後半——「だから技術が残る」のほうには、答えられません。このデータは興味の向きを聞いたもので、何が身につくかを測っていません。手を動かす向き方が高いことと、手に職がつくことは、別の話です。

形になったものを見ないと進んだ気がしない人は、この職業の向き方と近いところにいます。

③ 調整ばかり——人と関わる向き方は、4職業の中で上から2番目です

人と関わる向き方も、人を説得し動かす向き方も、4職業の中では上から2番目に出ています。 上にいるのは経営コンサルタントで、下に人事コンサルタントとM&Aアドバイザーが来ます。

つまり、低くはないが、最上位でもない。この2つの領域はコンサル4職業の全体が高い側なので、「人と関わることそのものを避けたい」という理由でこの職業を選ぶと、噛み合いにくくなります。

説得よりも、調べて筋を通すほうに関心が向く人には、4職業の中でここが最も近い位置になります。調べて突き止める向き方は、この4職業の中で最も高いのがITコンサルタントだからです(経営コンサルタントとはほとんど並びます)。

④ 潰しが効かない——答えられるのは、手順を回す向き方の位置だけです

求人の数も、資格も、転職のしやすさも、このデータには入っていません。「潰しが効くか」そのものには答えられません。

答えられるのは、決まった手順を正確に回す向き方が、どのあたりに出ているかだけです。業界としてのコンサルは、この向き方が37業界の中で最も低い側にあります。その中でいちばん高いのがITコンサルタント——二段になっている話です。

ただし、この位置は移りやすさではありません。向き方の遠い近いを見ているだけで、どこへ移れるかは求人と選考の話です。

もう1つ。自己成長をどれだけ大事にしているかは、4職業の中でITコンサルタントが最も高く出ています。次に来るのが経営コンサルタントです。

同じ場所で長く積むより、変わり続ける環境のほうが落ち着く人にとって、この向き方は追い風になります。逆に、積み上げた形をそのまま持ち歩けることを条件にしたい人は、このデータでは確かめられません。

⑤ 「経営コンサルタントの下位互換」——上下ではなく、2対2で分かれています

6つの領域を並べると、この2職業は上下ではなく分かれ方をしています。

  • 経営コンサルタントのほうが高いのは2つ——人と関わる向き方と、人を説得し動かす向き方
  • ITコンサルタントのほうが高いのは2つ——手を動かして形にする向き方と、決まった手順を正確に回す向き方
  • 調べて突き止める向き方はほとんど並び、表現する向き方も差はわずかです

満足の置きどころも、同じように割れます。経営コンサルタントのほうが高いのは、達成感・専門性・自律性の3つ。ITコンサルタントのほうが高いのは、自己成長と、雇用や生活の安定性、そして報酬を大事にしている度合いです。

報酬・雇用や生活の安定性・私生活との両立は、いずれも「どれだけ大事にしているか」の値です。実際の金額も、雇用の安定度も、このデータは測っていません。

裁量の広さと、決め切ることに満足を置く人は経営コンサルタントの側に近く、変わり続けることと、生活・条件の側も手放したくない人はITコンサルタントの側に近い。下位互換ではなく、置きどころが違います。


まとめ

  • 「炎上案件に当たると潰れる」には答えられない。 労働時間はこのデータの外側。言えるのは、私生活との両立を大事にしている度合いが4職業の上側にあることまで
  • 「手を動かさない仕事だ」は、4職業を並べると逆を向く。 手を動かして形にする向き方も、決まった手順を正確に回す向き方も、コンサル4職業の中で最も高い側
  • 「人と話すのが苦手だと務まらない」は、向き方なら言える。 人と関わる向き方は4職業の中で上から2番目——低くはないが最上位でもない
  • 「潰しが効かない」で答えられるのは、手順を回す向き方の位置だけ。 業界としてのコンサルは37業界で最も低い側、その中でいちばん高いのがITコンサルタント。位置は移りやすさではない
  • 「経営コンサルタントの下位互換」は違う。 6領域は2対2で分かれ、満足の置きどころも割れる

5つは、同じ人が同じ理由で言っているわけではありません。手を動かして形にすることと、変わり続けること——このどちらが自分の側にあるかで、5つのうちどれが自分の話なのかが変わります。

先に見るのは、そこです。


この記事の根拠

数値の内訳をひらく

本文では数値を出さず、順位と上位・下位の言葉だけで書いています。元になった値をここに置きます。

比べた集合:コンサルに分類した4職業(ITコンサルタント・経営コンサルタント・人事コンサルタント・M&Aアドバイザー)。本文の「最も」「2番目」は、すべてこの4職業の中での順位です。他の業界や、job tag 全体の中での順位ではありません。

職業興味(6領域)

  • 手を動かして形にする(現実的):IT 3.22 / 経営 2.98 / M&A 2.88 / 人事 2.47
  • 調べて突き止める(研究的):IT 3.55 / 経営 3.51 / M&A 3.04 / 人事 2.66
  • 表現する(芸術的):経営 2.74 / IT 2.71(M&Aと同値)/ M&A 2.71 / 人事 2.45
  • 人と関わる(社会的):経営 3.72 / IT 3.55 / 人事 3.34 / M&A 3.33
  • 人を説得し、動かす(企業的):経営 3.89 / IT 3.73 / M&A 3.67 / 人事 3.25
  • 決まった手順を正確に回す(慣習的):IT 2.88 / 経営 2.72 / 人事 2.68 / M&A 2.46

満足の置きどころ(仕事価値観のうち、本文で使った7項目)

  • 自己成長:IT 3.93 / 経営 3.81 / 人事 3.73 / M&A 3.36
  • 私生活との両立:IT 3.52 / 人事 3.50 / 経営 3.15 / M&A 3.00
  • 雇用や生活の安定性:IT 3.46 / 経営 3.10 / 人事 3.06 / M&A 2.94
  • 報酬:IT 3.64 / 経営 3.35 / 人事 2.98 / M&A 2.85
  • 達成感:経営 4.06 / IT 3.75 / 人事 3.63 / M&A 3.39
  • 専門性:経営 4.13 / IT 3.89 / 人事 3.77 / M&A 3.42
  • 自律性:経営 4.00 / 人事 3.88 / IT 3.86 / M&A 3.21

業界平均との関係:コンサル4職業を平均した業界値のうち、決まった手順を正確に回す向き方は 2.69 で、37業界の中で最も低い値です(最も高いのは管理部門(課長級)3.58)。本文④の「二段になっている話」は、この業界平均と、4職業の中の順位の2つを指しています。

順位の数え方:同じ値には同じ順位を与えています(表現する向き方の 2.71 は2職業が同値)。0.01以内の差は同率として数え、それより大きい差だけを順位として読んでいます。 本文で「ほとんど並ぶ」「ほぼ並んで」と書いたのは、順位はついても差が小さい(0.05未満)ところです。

このデータに含まれていないもの:労働時間・残業・休日・年収・求人の数・離職率・選考の通過率・年齢構成・企業ごとの違い。「報酬」「雇用や生活の安定性」「私生活との両立」は、いずれも「どれだけ大事にしているか」の値で、実際の金額や勤務の実態ではありません。能力・スキルも測っていないので、「務まるかどうか」もこのデータでは答えられません。

出典:厚生労働省 職業情報提供サイト(日本版O-NET)「job tag」簡易版数値系ダウンロードデータ ver.7.00(最終更新 2026年3月17日/制作・著作:独立行政法人 労働政策研究・研修機構)