「独立しても平均年収が低い、と何度も書かれている」 「独占業務が弱いから他の士業に持っていかれる、とも聞いた」 「書類を書き写すだけの仕事だ、という言い方もある」
どこまでが資格の話で、どこからが働き方の話なのかが分からない。
言われている中身は、5つに分かれます。
6領域——士業の3職業の中では、手を動かすが1位
- 手を動かす
- 2.651位
- 調べて突き止める
- 3.282位
- 表現する
- 2.202位(同率2)
- 人と関わる
- 3.901位
- 人を動かす
- 3.452位
- 決まった手順を正確に回す
- 3.423位
順位は士業に収録された3職業の中での順位です。37業界の業界平均の順位ではありません。0.01以内の差は同率として数えています。
満足の置きどころ——11項目のうち、専門性が1位
- 1位
- 専門性 4.05
- 2位
- 達成感 4.00
- 3位
- 自律性 3.93
11項目は、その職業に就いている人が何を大事にしているかです。何に満足しているかを測ったものではありません。給与・雇用・労働時間・安全そのものの数値でもありません。0.01以内の差は同率として数えています。
同じところに満足を置く職業を、業界をまたいで見る:手に職をつけたい人に向いてる仕事/マイペースな人に向いてる仕事
「行政書士はやめとけ」の中身——社会保険労務士と税理士の隣に置くと、裏返るのは1つでした
| # | 言われていること | 判定 |
|---|---|---|
| ① | 資格を取っても食えない | 答えられない |
| ② | 独占業務が弱く、仕事を他の士業に取られる | 答えられない |
| ③ | 結局は営業。書類の仕事だと思って入ると違う | 向き方なら言える |
| ④ | 書類を書き写すだけの、単調な仕事だ | 同じ業界の3職業の中では逆に出ます |
| ⑤ | 同じ勉強をするなら、社会保険労務士のほうがいい | 違う |
比べている相手は、士業に分類した3つの職業です。行政書士・社会保険労務士・税理士を、同じ物差しで横に並べています。
① 食えない——収入の側は、ここには入っていません
年収も、案件の単価も、廃業率も、このデータには入っていません。だから「食えるか」には答えられません。
代わりに出てくるのは、満足の置きどころのほうです。報酬を大事にしている度合いは、士業3職業の中で最も低く、しかも差がはっきり開くほうでした。
雇用や生活の安定性を大事にしている度合いも、同じく3職業の中で最も低く出ています。
報酬・雇用や生活の安定性・私生活との両立は、いずれも「どれだけ大事にしているか」の値です。実際の収入も、仕事の安定度も、このデータは測っていません。
「稼げないから重視していない」のか「重視していない人が残っている」のかは、この数値では区別できません。
安定と収入を条件の先頭に置いて資格を選ぼうとしている人にとって、この職業の数値は追い風になりません。逆に、達成感を大事にしている度合いは3職業の中で最も高く出ています。件数をこなして片づいていくことに満足を置ける人とは、噛み合いやすい形です。
② 独占業務が弱い——仕事の範囲は、数値では測れません
どの手続きを誰が扱えるかは制度の話で、このデータには入っていません。案件の量も、他の資格との競合も同じです。「取られるか」には答えられません。
出てくるのは、別の2つです。奉仕・社会貢献を大事にしている度合いは、3職業の中で高いほう。社会保険労務士とはほとんど並びます。一方、社会的認知を大事にしている度合いは、3職業の中で最も低く出ています。
肩書きの重さや、名乗ったときの通りの良さを支えにしたい人には、ここが噛み合いにくいところです。 数値が指しているのは、目の前の相手の困りごとが片づく側でした。
決められるのは、名前の強さを求めているのかどうかのほうです。
③ 結局は営業だ——人と関わる比重なら、はっきり出ています
人を説得し、動かす向き方は、士業3職業のちょうど真ん中でした。社会保険労務士より低く、税理士より高い位置です。
そして人と関わる向き方は、3職業の中で最も高く出ています。 社会保険労務士とは、ほとんど並ぶ位置です。
書類だけを相手にする時間を想像して入ると、そこがずれます。
相手の事情を聞き取って、どの手続きに落とすかを決める——その往復が苦にならない人は、この職業の向き方と近いところにいます。
④ 「書き写すだけ」——反復の話をすると、逆の並びが出てきます
決まった手順を正確に回す向き方は、士業3職業の中で最も低く出ています。社会保険労務士と税理士は同じ値で、行政書士だけが下にいます。
その一方で、人と関わる向き方は3職業の中で最も高い。手順の反復が最も薄く、人と関わる比重が最も厚い。それが、3職業に並べたときのこの職業の形です。
だからこの言われ方は、3職業を並べると逆を向きます。
ただし、実際の作業のうちどれだけが書式の記入なのかは、このデータでは分かりません。
⑤ 「社会保険労務士のほうがいい」——比べる場所は、6領域ではありませんでした
6領域を並べると、上下にはなりません。
- 社会保険労務士のほうが高いのは3つ——人を説得し動かす向き方、決まった手順を正確に回す向き方、表現する向き方
- 行政書士のほうが高いのは2つ——手を動かして形にする向き方、調べて突き止める向き方
- 人と関わる向き方は、ほとんど並びます
そもそも、6領域のどの差も大きくはありません。いちばん開くのが説得する向き方で、そこは社会保険労務士の側です。
満足の置きどころのほうが、はっきり割れます。専門性・報酬・雇用や生活の安定性を大事にしている度合いは社会保険労務士が上。達成感と私生活との両立を大事にしている度合いは行政書士が上でした。自律性と自己成長は、2職業で同じ値です。
どちらを取るかで変わるのは、資格の格ではありません。 提案して動かす側にいたいのか、依頼を受けて片づける側にいたいのか——その置きどころのほうです。
社会保険労務士の側から同じ3職業を見たものは、社会保険労務士の「やめとけ」に置いています。
まとめ
- 「食えない」には答えられない。 収入はこのデータの外側。言えるのは、報酬と雇用や生活の安定性を大事にする度合いが3職業の中で最も低い、という置きどころまで
- 「独占業務が弱い」にも答えられない。 制度と案件量は測っていない。出てくるのは、社会的認知を大事にする度合いが3職業で最も低く、奉仕・社会貢献は高い側にある、という2つだけ
- 「結局は営業」は、向き方なら言える。 説得する向き方は3職業の真ん中。ただし人と関わる向き方は3職業の中で最も高い
- 「書き写すだけ」は、3職業に並べると逆を向く。 決まった手順を正確に回す向き方が3職業で最も低く、人と関わる向き方が最も高い
- 「社会保険労務士のほうがいい」は違う。 6領域の差はどれも小さく、割れるのは満足の置きどころのほう
5つのうち2つは、制度と収入の話でした。残る3つは、名前の強さを求めているのか、片づいていく感覚を求めているのかで並び替わります。
どちらを求めているのかを面談でどう伝えるかは、士業の転職エージェントの選び方に書いています。
この記事の根拠
数値の内訳をひらく
本文には数値を出さず、順位と上位・下位の言葉だけで書いています。元になった値をここに置きます。
比べた集合:士業に分類した3職業(行政書士・社会保険労務士・税理士)。本文の「最も」「真ん中」は、すべてこの3職業の中での順位です。他の業界や、job tag 全体の中での順位ではありません。弁護士・公認会計士・司法書士などは別の業界(法律・会計)に入れているので、ここでは数えていません。3職業しかないため、順位の言葉は「3つのうちどれか」以上の意味を持ちません。
職業興味(6領域)
- 手を動かして形にする(現実的):行政書士 2.65 / 税理士 2.61 / 社会保険労務士 2.54
- 調べて突き止める(研究的):税理士 3.33 / 行政書士 3.28 / 社会保険労務士 3.18
- 表現する(芸術的):社会保険労務士 2.38 / 税理士 2.21 / 行政書士 2.20
- 人と関わる(社会的):行政書士 3.90 / 社会保険労務士 3.87 / 税理士 3.81
- 人を説得し、動かす(企業的):社会保険労務士 3.71 / 行政書士 3.45 / 税理士 3.32
- 決まった手順を正確に回す(慣習的):社会保険労務士 3.54 / 税理士 3.54 / 行政書士 3.42
満足の置きどころ(仕事価値観のうち、本文で使った8項目)
- 達成感:行政書士 4.00 / 社会保険労務士 3.90 / 税理士 3.81
- 自律性:行政書士 3.93 / 社会保険労務士 3.93 / 税理士 3.90
- 専門性:社会保険労務士 4.25 / 行政書士 4.05 / 税理士 4.00
- 自己成長:行政書士 3.83 / 社会保険労務士 3.83 / 税理士 3.79
- 社会的認知:税理士 3.68 / 社会保険労務士 3.63 / 行政書士 3.36
- 奉仕・社会貢献:行政書士 3.69 / 社会保険労務士 3.68 / 税理士 3.48
- 私生活との両立:行政書士 3.72 / 社会保険労務士 3.68 / 税理士 3.16
- 雇用や生活の安定性:社会保険労務士 3.40 / 税理士 3.34 / 行政書士 2.91
- 報酬:税理士 3.53 / 社会保険労務士 3.39 / 行政書士 2.85
①で「差がはっきり開く」と書いた根拠:報酬の 3職業の幅は 0.68、雇用や生活の安定性は 0.49。どちらも、6領域で最も開いた幅(企業的の 0.39)より大きくなっています。社会的認知の幅は 0.32 で、こちらは 0.39 より小さいため、本文②では幅ではなく順位だけを書いています。
⑤で比べた2職業の差:社会保険労務士が上回るのは企業的(3.71/3.45)・芸術的(2.38/2.20)・慣習的(3.54/3.42)。行政書士が上回るのは現実的(2.65/2.54)・研究的(3.28/3.18)。社会的は 3.87/3.90 で、差は 0.03 です。
順位の数え方:同じ値には同じ順位を与えています(慣習的の 3.54、自律性の 3.93、自己成長の 3.83 は2職業が同値)。0.01以内の差は同率として数え、それより大きい差だけを順位として読んでいます。本文で「ほとんど並ぶ」と書いたのは差が0.05未満のところです(社会的の 3.90 と 3.87、奉仕・社会貢献の 3.69 と 3.68)。
このデータに含まれていないもの:年収・案件の単価・廃業率・求人の数・労働時間・独占業務の範囲・法改正の影響・試験の合格率・年齢構成・事務所ごとの違い。「報酬」「雇用や生活の安定性」「私生活との両立」「社会的認知」は、いずれも「どれだけ大事にしているか」の値で、実際の金額や世間の評価ではありません。能力・スキルも測っていないので、「務まるかどうか」もこのデータでは答えられません。
出典:厚生労働省 職業情報提供サイト(日本版O-NET)「job tag」簡易版数値系ダウンロードデータ ver.7.00(最終更新 2026年3月17日/制作・著作:独立行政法人 労働政策研究・研修機構)