「感電もあるし、高いところにも上る。危ないぞ」と言われる。
「資格を取ったところで、結局は体力勝負だ」とも書いてある。
独立しないと報われない、と結論づける記事も多い。
どれも本当らしく読めて、自分の話なのかが決まらない。
言われている中身は、5つに分かれます。
6領域——建設技能・職人の20職業の中では、人と関わるが6位
- 手を動かす
- 3.799位
- 調べて突き止める
- 2.9112位(同率3)
- 表現する
- 2.5916位
- 人と関わる
- 3.336位
- 人を動かす
- 2.919位
- 決まった手順を正確に回す
- 3.249位(同率3)
順位は建設技能・職人に収録された20職業の中での順位です。37業界の業界平均の順位ではありません。0.01以内の差は同率として数えています。
満足の置きどころ——11項目のうち、専門性が1位
- 1位
- 専門性 3.62
- 2位
- 達成感 3.54
- 3位
- 自律性 3.42
11項目は、その職業に就いている人が何を大事にしているかです。何に満足しているかを測ったものではありません。給与・雇用・労働時間・安全そのものの数値でもありません。0.01以内の差は同率として数えています。
同じところに満足を置く職業を、業界をまたいで見る:手に職をつけたい人に向いてる仕事/マイペースな人に向いてる仕事
「電気工事士はやめとけ」の中身——出どころは、それぞれ別です
| # | 言われていること | 判定 |
|---|---|---|
| ① | 感電も高所もある。危ない仕事だ | 答えられない |
| ② | 資格を取っても、結局は体力勝負だ | 向き方なら言える |
| ③ | 人付き合いが苦手でも務まる | 同じ業界の20職業の中では逆に出ます |
| ④ | 決められたとおりに配線するだけだ | 向き方なら言える |
| ⑤ | 独立しないと報われない | 答えられない |
比べている相手は、建設技能・職人に分類した20の職業です。大工・左官・配管工から測量士・CADオペレーターまで、同じ物差しで横に並べています。
先に1つ。6つの領域のどれを見ても、電気工事士は20職業の端に立ちません。最も高い職業でも、最も低い職業でもない位置から、5つに答えることになります。
① 感電も高所もある——事故の起きやすさは、この調査の外です
実際の事故率も、高所作業の頻度も、労働時間も入っていません。だから「危ないかどうか」には答えられません。 材料が無い、という意味です。
そのうえで、位置なら1つ言えます。安全であることをどれだけ大事にしているかは、20職業の真ん中あたりに出ています。上には送電線工事や大工が来て、下には防水工が来ます。
これは事故の起きやすさではなく、何を大事にしているかの値です。危険の度合いも、現場の対策も、この調査は測っていません。
安全であることを条件の一番上に置きたい人にとって、この位置は追い風になりません。ただし、危ないことの証明にもなりません。
② 結局は体力勝負——手を動かす向き方は、上から9番目です
真ん中より少し上、というあたりです。大工・造園工・建築板金は、いずれもこれより上に来ます。
つまり、この20職業の中で「いちばん体を使う側」ではありません。 体力を根拠に選ぶ理由も、避ける理由も、この並びからは出てきません。
体力そのものも、年齢も、何歳まで続けられるかも、この調査には入っていません。「資格を取っても」の部分にも答えられません。資格の種類も、取得の難しさも、聞かれていない項目です。
③ 人付き合いが苦手でも務まる——20職業を並べると、逆を向きます
人と関わる向き方は、20職業の中で上から6番目です。上にいるのは造園工・大工・建設土木作業員などで、下には十数の職業が並びます。
「職人だから人と話さなくていい」を20職業に当てはめると、電気工事士は当てはまらない側に来ます。 最も低いのはCADオペレーターで、そこからはかなり離れた位置です。
人と関わる量を減らしたいという理由でこの職業を見ているなら、同じ業界の中にもっと下がる場所があります。逆に、現場で人とやりとりすること自体は苦にならない人にとって、この項目は障害になりません。
④ 配線するだけ——調べる側も、手順の側も、端ではありません
「誰でもできる」と言うとき、根拠として持ち出されるのはたいてい2つです。考える余地が無いことと、手順が決まっていることです。
調べて突き止める向き方は、20職業の下側に来ます。ここは言われ方に近い側です。
一方、決まった手順を正確に回す向き方は真ん中あたりで、上端の測量士とは大きく離れています。手順の職業として突き抜けているわけでもない。
2つとも端に立たないので、「誰でもできる」の根拠は、この20職業の並びの中には見つかりません。 できるかどうかを測った項目も入っていません。
⑤ 独立しないと報われない——言えるのは、置きどころの位置だけ
収入も、独立した人の割合も、この調査の外にあります。「報われるか」そのものには答えられません。
言えるのは2つの位置です。雇用や生活の安定性をどれだけ大事にしているかは、20職業の上側にあります。報酬をどれだけ大事にしているかも、上から5番目です。
この2つがそろって上から5番目までに入るのは、20職業の中で電気工事士と送電線工事だけでした。
報酬も、雇用や生活の安定性も、「どれだけ大事にしているか」の値です。実際の金額も、雇用の安定度も、測ったものではありません。
条件の側を手放さずに考えたい人は、この20職業の中では上側に立っています。ただしそれは、返ってくる量の話ではありません。
まとめ
- 「危ない」には答えられない。 事故率は調査の外側。言えるのは、安全であることを大事にする度合いが20職業の真ん中あたりにあることまで
- 「結局は体力勝負」は、向き方なら言える。 手を動かして形にする向き方は上から9番目で、この20職業の中でいちばん体を使う側ではない
- 「人付き合いが苦手でも務まる」は、20職業を並べると逆を向く。 人と関わる向き方は上から6番目
- 「配線するだけ」の根拠は、並びの中に無い。 調べて突き止める向き方は下側、手順を回す向き方は真ん中あたりで、どちらも端ではない
- 「独立しないと報われない」には答えられない。 言えるのは、雇用の安定と報酬をどちらも上側に置く、数少ない職業だという位置まで
5つのうち、この並びが向き合えるのは②③④の向き方と、⑤の置きどころだけです。残りは、現場と条件を直接確かめる話になります。
5つとも、端ではない位置から答えることになりました。電気工事士について語られていることの多くは、この職業だけの話ではなく、建設技能全体の話です。
どこまでが業界の話で、どこからがこの職業の話なのか——それを面談で切り分ける手順は、建設技能・職人の転職エージェントの選び方に書いています。
この記事の根拠
数値の内訳をひらく
本文には数値を置かず、順位と上下の言葉だけで書いています。元になった値をここに並べます。
比べた集合:建設技能・職人に分類した20職業(測量士・CADオペレーター・大工・型枠大工・鉄筋工・鉄骨工・とび・建設機械オペレーター・建設土木作業員・左官・建築板金・サッシ取付・内装工・建築塗装工・防水工・電気工事士・配管工・送電線工事・解体工・造園工)。本文の「上から◯番目」「上側」「下側」は、すべてこの20職業の中での位置です。37業界の平均や、job tag 全体の中の順位ではありません。
手を動かして形にする(現実的)・高い順:大工 4.21 / 造園工 4.01 / 建築板金 3.97 / 建設・土木作業員 3.94 / 鉄筋工 3.93 / 型枠大工 3.92 / 配管工 3.90 / サッシ取付 3.84 / 電気工事士 3.79 / 送電線工事 3.77 / 測量士 3.75 / 鉄骨工 3.74 / 建設機械オペレーター 3.67 / 解体工 3.64 / 建築塗装工 3.57 / 内装工 3.52 / 左官 3.44 / 防水工 3.44 / CADオペレーター 3.43 / とび 3.41
人と関わる(社会的)・高い順:造園工 3.70 / 大工 3.52 / 建設・土木作業員 3.41 / サッシ取付 3.37 / 送電線工事 3.35 / 電気工事士 3.33 / 測量士 3.29 / 配管工 3.28 / 建築板金 3.26 / 建築塗装工 3.21 / 解体工 3.21 / 型枠大工 3.18 / 左官 3.18 / 建設機械オペレーター 3.18 / 内装工 3.10 / 鉄筋工 3.09 / とび 3.05 / 防水工 3.00 / 鉄骨工 2.90 / CADオペレーター 2.84
調べて突き止める(研究的):電気工事士 2.91 は20職業の下から数えて7つ目のあたりです(最も高いのは造園工 3.45、最も低いのは解体工 2.61)。すぐ上の建設機械オペレーター 2.92・防水工 2.92 とは 0.01 差なので、本文では順位を書かず「下側」としました。
決まった手順を正確に回す(慣習的):電気工事士 3.24 は上から10番目ですが、送電線工事 3.23・造園工 3.25 と 0.01 差で並ぶため、本文では「真ん中あたり」としました。この領域で最も高いのは測量士 3.65、最も低いのは建設機械オペレーター 2.83 です。
6領域の端:現実的の最高は大工 4.21・最低はとび 3.41、研究的は造園工 3.45・解体工 2.61、芸術的は造園工 3.66・解体工 2.25、社会的は造園工 3.70・CADオペレーター 2.84、企業的は大工 3.16・内装工 2.65、慣習的は測量士 3.65・建設機械オペレーター 2.83。電気工事士は、この12の端のどこにも入りません(芸術的 2.59、企業的 2.91)。
労働安全衛生を大事にする度合い・高い順:CADオペレーター 3.48 / 送電線工事 3.29 / 大工 3.24 / 型枠大工 3.13 / 鉄筋工 3.10 / とび 3.09 / 測量士 3.07 / サッシ取付 3.02 / 建設機械オペレーター 2.98 / 解体工 2.97 / 電気工事士 2.96 / 配管工 2.96 / 左官 2.93 / 内装工 2.93 / 建築板金 2.88 / 鉄骨工 2.86 / 建築塗装工 2.84 / 建設・土木作業員 2.76 / 造園工 2.72 / 防水工 2.44
雇用や生活の安定性を大事にする度合い・上から6つ:送電線工事 3.68 / 配管工 3.10 / CADオペレーター 3.05 / 電気工事士 3.04 / 建設機械オペレーター 3.03 / 測量士 2.98(最も低いのは建設・土木作業員 2.54)。上位3つとは 0.01 刻みで並ぶため、本文では順位を書かず「上側」としました。
報酬を大事にする度合い・上から6つ:送電線工事 3.32 / 大工 3.22 / とび 3.02 / 建築板金 2.98 / 電気工事士 2.96 / 配管工 2.94(最も低いのは鉄骨工 2.48)。
⑤の「両方で上から5番目までに入るのは2つだけ」:雇用や生活の安定性の上位5は送電線工事・配管工・CADオペレーター・電気工事士・建設機械オペレーター、報酬の上位5は送電線工事・大工・とび・建築板金・電気工事士。両方に入るのは電気工事士と送電線工事です。
順位の数え方:同じ値には同じ順位を与えています。0.01以内の差は同率として数え、それより大きい差だけを順位として読んでいます。本文で「ほとんど並ぶ」と書いたのは差が 0.05 未満のところです。
このデータに含まれていないもの:年収・日給の形・労働時間・休日・実際の事故率・資格の種類や取得の難易度・独立した人の割合・求人の数・年齢構成・元請と下請の関係。「報酬」「雇用や生活の安定性」「労働安全衛生」は、いずれも「どれだけ大事にしているか」の値で、実際の金額や現場の安全対策ではありません。能力も測っていないので、「務まるかどうか」も答えられません。
出典:厚生労働省 職業情報提供サイト(日本版O-NET)「job tag」簡易版数値系ダウンロードデータ ver.7.00(最終更新 2026年3月17日/制作・著作:独立行政法人 労働政策研究・研修機構)