転職エージェントを使うメリット——面接官の側から見ると、話が変わります

「自分で応募したほうが早いのではないか」 「エージェントを挟むと、企業側は採用コストがかかるから不利になるのでは」 「結局、求人を横流しされるだけではないか」

どれも、もっともな疑問です。

このページは、求職者としてエージェントを使った経験と、面接官として候補者を迎えた経験の両方から書きます。

先に結論を言うと——いちばん大きいメリットは、比較サイトにあまり書かれていません。


よく挙げられるメリットは、4つです

転職の比較記事を何本か読むと、だいたい同じ4つが並びます。

  • 非公開求人を紹介してもらえる
  • 職務経歴書を添削してもらえる
  • 面接対策をしてもらえる
  • 年収交渉を代わりにやってもらえる

どれも実際にあります。 ただ、これだけなら「自分でやればいい」という反論が成り立ちます。

書類は自分で直せます。 面接対策も本が出ています。年収交渉も、勇気を出せば自分でできる。

それでもエージェントを挟む理由が、もう1つあります。


面接官が測る実力に、補正がかかります

ここが、このページでいちばん伝えたいところです。

私は面接官として、候補者と会っていた側にいました。 そこで何度も起きたことがあります。

面接で、明らかに緊張している人がいる。 話がまとまらない、質問の意図から少しずれる、沈黙が長い。

そういうとき、エージェント経由の候補者は、判断材料が1つ多い。

  • なぜこの人がうちを受けているのか(本人の言葉とは別に、事前に伝わっている)
  • いまの職場で何をしていて、何に詰まっているのか
  • 前の選考で、どう見られていたか

3つ目については、正直に書いておきます。 これは本人の同意なく、他社の選考での評価が面接官に渡っているということでもあります。良いことだとは書きません。 ただ、実際にそうなっている、という話です。

この情報があると、「今日のこの人は、本来の状態ではないかもしれない」と判断できます。

つまり——面接という一発勝負の場で、下振れが補正されます。

直接応募だと、この補正はかかりません。 その日の30分がすべてです。


だから、伝わり方が変わる相手を選ぶ

上の補正は、エージェントが「あなたのことを正しく理解している」場合にだけ働きます。

理解していない相手だと、逆に働きます。

  • 求人票の要件に合わせて話が盛られる → 面接で本人が答えられず、印象が下がる
  • 志望動機を作ってもらう → 深掘りされたときに中身が無く、志望が低いと判断される

2つ目は、実際に何度も見ました。

型どおりの志望動機を話す人がいる。 そこを1段深く聞くと、答えが出てこない。

そのときの判断はこうなります。 「エージェントに言われただけ、とまでは言わないが、志望は高くない」。

エージェントに志望動機を作らせるのは、逆効果です。 作ってもらうべきなのは動機ではなく、すでにある動機の伝え方のほうです。


使わないほうがいいケースもあります

全員に勧められるものではありません。 次に当てはまるなら、使わない判断も合理的です。

① 行き先がもう決まっている

特定の会社を受けると決めているなら、直接応募のほうが速い。 エージェントを挟む意味は、選択肢を広げることにあります。1社しか見ないなら、その価値が出ません。

② いま動く気がない

登録すると連絡が来ます。 情報収集だけのつもりだと、そのやり取り自体が負担になります。

「いま動くかは決めていないが、市場を知りたい」なら、先に業界別の向き・不向き一覧を見たほうが早いです。数値だけなら、誰とも話さずに済みます。

③ 応募先が、エージェントを使っていない領域にある

中小・地場の企業、公的機関、一部の専門職を狙っている場合、紹介できる求人が出てこないことがあります。

このサイトは求人数を測っていません(→ このサイトのデータについて)。登録して、扱いが無いと分かった時点で判断するしかありません。

④ 「合わない」と言われることに耐えられない

エージェントは成功報酬なので、決まらないと判断した相手には時間を使いません。 「ご経歴では難しい」と言われることがあります。

それは市場の評価ではなく、そのエージェントが扱う求人のレンジの話なのですが、受け取り方によっては消耗します。


何社に登録するか

1社だと、その会社が扱う求人のレンジしか見えません。

私が使ったのは3社でした。総合型を1社、特化型を2社。 そして決まったのは、2つ目の特化型です。

ここが、この節でいちばん言いたいところです。

「特化型ならいい」ではありません。 1つ目の特化型は、扱っている求人のレンジが自分と合っていませんでした。合うかどうかは、話してみるまで分かりません。

だから、特化型を1社に絞ると、外したときに打ち手が無くなります。

理由は、見えるものが違うからです。

見えるもの
総合型業界をまたいだ選択肢。いまの市場での自分の位置
特化型その業界の中の細かい違い。企業ごとの実態

総合型は1社で足ります。 見えるものが「自分の位置」なので、複数から聞いても同じ答えになります。

特化型は、レンジが合わなかったときの予備が要ります。

どちらか一方だと、片側が見えないまま決めることになります。


降りるときの伝え方

合わないと分かるのは、たいてい1回目か2回目の面談です。

そのときは、黙ってフェードアウトしないほうがいいです。 「今回は見送ります」と一言だけ伝える。理由まで説明する必要はありません。

気まずさを感じる必要も、ありません。


まとめ

  • よく挙がるメリット4つ(非公開求人・書類添削・面接対策・年収交渉)は本当だが、自分でもできる
  • 自分でできないのは、面接官が測る実力に補正がかかること。 直接応募だと、その日の30分がすべて
  • ただし補正は、相手が自分を正しく理解している場合にだけ働く
  • 志望動機を作ってもらうのは逆効果。 作ってもらうべきなのは、すでにある動機の伝え方
  • 使わないほうがいいケースもある(行き先が決まっている/動く気がない/扱いのない領域を狙っている)
  • 総合型1社+特化型2社。 特化型は、扱う求人のレンジが合うかどうかが話すまで分からないので、予備が要る

エージェントは「求人をくれる人」ではなく、「面接官に自分を正しく伝えてくれる人」です。

だから、自分の理由と適性に寄り添えない相手では、意味がありません。


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